その一方で、一見渋い雰囲気とは裏腹に、真っ直ぐで諦めが悪く、弱いくせに強気で、結局は女に弱い。冗談半分のような生き方をしながら、依頼人となるヒロインのために時に傷つき涙するそのギャップに、完全に心をもって行かれた。
「俺はこの街のプライベートアイ」のセリフとともにススキノを闊歩する姿に、「依頼人を守るのが探偵の仕事だ」と命を懸けて戦う姿に、漂う哀愁。そして色気…!
ある在日コリアン一家の物語を描いた『焼肉ドラゴン』('18)では、より男くさく、そんな色気を感じさせた。大泉演じる、関西弁で口が悪く仕事も長続きしない男、哲男は、幼馴染みの妹と結婚しながら、実はその幼馴染みのことを密かに思い続けるどうしようもない男。だが、彼女に向ける一途な愛と、なりふり構わない切実さを伴った告白には、彼女だけでなく、妹を含む家族、さらには観客の心さえも動かされてしまう。「ほんまにダメな人やなぁ」と抱きしめられる哲男の、そのダメな部分すらも愛おしく思わせてしまう。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)