人間力を色気に変える、大泉洋の俳優道<ザテレビジョンシネマ部コラム>

2019/07/19 07:00 配信

映画

『恋は雨上がりのように』(C)2018 映画「恋は雨上がりのように」製作委員会 (C)2014 眉月じゅん/小学館


さらに、45歳のファミレス店長に恋する女子高校生を描いた『恋は雨上がりのように』('18)では、「普通を意識した」という大泉が冴えない中年男を体現。本作ではむしろ色気を出さないことで、ともすれば陳腐になりかねない女子高校生とおっさんの恋という題材を爽やかな恋愛映画にとどまらせる役目を担ったが、その計算し尽くされた“普通”に、やっぱり色気が漂うのはなぜだろう?

今も故郷、北海道でレギュラー番組をもち、舞台挨拶や番宣に立てばとにかくしゃべり倒し、人をいじり、ボヤき、笑いを巻き起こす。“面白い人”と誰もが信じて疑わず、ファンからは愛を込めて“洋ちゃん”と呼ばれ続ける…。

役者にとってキャラの濃さは時に邪魔になるが、大泉はそれがプラスに働く稀有な存在。当然だが、どの作品を見ても役柄=大泉ではない。にもかかわらず、根底にそのキャラがあるからこそ、面白い場面はより面白く、切ない場面はより切なく映る。それこそが、誰もが彼をマルチタレントではなく実力派俳優と認める所以であり、“色気”が引き出されるポイントなのだろう。

人としての魅力を役者として最高純度の形で昇華する大泉洋。我らが“洋ちゃん”の魅力には、底がないのだ。