――今回、企画を考える上で最も苦労した点は?
土屋敏男:苦労は絶えないんですけど、総じて言えば、前例がないから、とにかく何も分からないっていう(笑)。こんな風に作ってほしいという僕の考えを、ダンス、音楽、CGの各セクションのチームに伝えて、それをみんなで共有していくんですけど、どのチームにとっても、初めて挑戦することばかりなわけですよ。それぞれが想像しながら作っていくしかない。みんなで想像や妄想を共有しながら形にしていく作業って、すごく面白いんだけど、本当に大変で。吉本(興業)さんもよく付き合ってくれてるなと思いますよ(笑)。
――失礼な質問ですが、途中で「これはもう無理だ」と頓挫しそうになったことは…?
土屋:そのリスクは常にありました(笑)。どこかのセクションがギブアップした時点で、今回の企画は終わりですから。いつ断念してもおかしくない状況でしたね。だから、日本テレビにはずっと黙ってやってたんですよ(笑)。
――他人事ながら心配になりますが…(笑)。
土屋:制作発表も決まって、「本当にやるんだな」と確信を得た段階で初めて、日テレに「今度、吉本さんとこういうことをやります」と申請しました。でも、日テレもすごい会社だなと思ったのは、突然そんなこと言われたら、普通は怒ると思うんだけど、割とすんなり認めてくれたんですよ、「あぁ、そうですか」って感じで(笑)。やっぱり度量が広い会社ですよね、日本テレビって(笑)。
――このプロジェクトを進めていく中で、何か新しい発見はありましたか?
土屋:3Dスキャナに関しては、今や世界中で作られているし、多くのベンチャー企業が注目しているんだけど、その中でも、パナソニックのクオリティーの追求というのは本当にすごいんだなと。例えば、冷蔵庫の扉が閉まる時の気持ち良さみたいな、そういう日本ならではの細かいところへのこだわりは常に感じていました。
――“メイドインジャパン”の底力ですね。
土屋:そうですよね。まぁ、お客さんをスキャンしてステージに立たせるという僕のアイデア自体は、どこかの国に…いや、日本でも誰かに、きっとすぐに盗まれるんだろうなと思うけど(笑)、パナソニックをはじめ、今回参加してくれている(面白法人)カヤック、AR三兄弟といった“ものづくり集団”の仕事のクオリティーは、絶対どこにも負けないだろうなという自信はあります。
あと、何よりも感じたのは、多くの人たちと“ワクワク”を共有できる楽しさ、ですよね。「こういうことができたら面白いよね」から始まって、「できるかもしれない」、「いや、何とか実現させよう!」となっていくその過程が楽しいんです。できるかできないか、何の保証もない中で、「できたらいいね」という想像や妄想をみんなで共有できたことは、やっぱり、やってよかったなと思います。まぁ公演が始まるまで、まだいろいろ作り直したりしていくと思うので、どうなるか分かりませんけど(笑)。
――でも、そういう作業が楽しい?
土屋:はい。時にはテーブルをひっくり返したくなることもあるんだけどね(笑)。でも、今までも「電波少年」の猿岩石のヒッチハイク企画で、飛行機で移動してたことがバレたりとか(笑)、危機的状況に陥ったことはたくさんあったけど、そういう時こそ、真の力を発揮できるチャンスなんですよ。ピンチこそがチャンス。僕は割と耐久力があるタイプなんで(笑)。
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