――これまでのお話をお聞きする限り、土屋さんは今、“VR=バーチャルリアリティ”というテクノロジーに、ものづくりの可能性を感じてらっしゃるのかなと…。
土屋敏男:うん、VRにはいろんな可能性を感じてます。例えば今、僕は「1964 TOKYO VR」というプロジェクトに携わっていて。1964年というのは、前回の東京オリンピックが開かれた年で、いわば、今の東京の出発点となった年なんですね。その時代を、みんなが持ち寄った写真を使って、“記憶の中の街並み”として三次元データで再現しようと。つまり、みんなで“タイムマシン”を作ろう、というプロジェクトなんです。そんな風に、VRという最先端のテクノロジーから、ファンタジーを作り出すことができるっていうのは、すごくすてきなことですよね。
今回の「NO_BORDER」で言うと、3Dスキャンを使って、個人個人が勝手に作ってしまっている垣根とか壁を、“気持ち”で越えていこうというのが、大きなテーマで。政治や経済の事情で出来上がってしまったボーダーを、エンターテインメントで壊しちゃおうぜっていうね。その意味では、この「NO_BORDER」を必ず世界に持っていきたいです。
――「NO_BORDER」の海外展開は、具体的にどんな国を想定されていますか?
土屋:今はやっぱり中国かな。日中関係が微妙な今だからこそ、エンターテインメントで交流を深めたい。あと、個人的な夢としては、タイの山奥にあるような、数十人しか住んでいない小さな村に「NO_BORDER」を持って行きたいですね。白いシーツを縫い合わせたようなスクリーンの中で、村人全員のアバターが踊っている…そんな光景を想像するだけで、ワクワクするでしょ?(笑)
――どんどん可能性が広がっていきますね。
土屋:Netflixを例に出すまでもなく、ネット配信は今や世界がマーケットですからね。日本のテレビ局も、世界に誇れるだけのクリエイティビティを持っているわけだから、もっともっと世界に向けてチャレンジすればいいと思うし、僕は、この「NO_BORDER」で、世界中の人たちに「日本のエンターテインメントはすごいよね」って言わせたい。言葉を使わないプロジェクトだから、余計にそう思うんです。アメリカでもヨーロッパでも、「来てくれ」って言われたらいつでも行きますよ。3Dスキャナと、プロジェクターとスクリーンさえあればできるイベントなので。
――では最後に、この「NO_BORDER」は、どんな人に楽しんでもらいたいですか?
土屋:もちろん、どの世代の方にも参加してほしいんですが、お年寄りだったり、赤ちゃん連れのママだったり、普段テクノロジーに触れる機会が少ない人たちに見に来ていただけたらうれしいですね。
それともちろん、いろんな国からの参加もお待ちしています。今回は毎公演、参加してくれた国、地域のコールをするんです。この前、アバターをリードするメインダンサーの“千手観音かずこ”こと森三中の黒沢かずこが、そのコールを録音したんですよ。全世界、199の国・地域のコールを録ったので、どこのお客さんが来ても大丈夫です(笑)。開催が終わる9月までに、199全部のコールを会場で聞きたいですね。
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