オープニングはファーストアルバム『My Name is SOLEIL』からの「魔法を信じる?」(作曲はリーダーでベーシストのサリー久保田)。
大阪や名古屋の同ツアーで歌われた時はイントロが終わりかかるころに、リードボーカルのそれいゆがさっそうと登場してきた記憶があるのだが、今回はサリー久保田が“デッデッデー”と冒頭のリフを弾くころにはステージにいた。それいゆが登場すると突如として辺りが透明感いっぱいの空間となり、桃源郷の風が吹く。
小道具使いの達人としても知られるそれいゆが、この日最初に手にした小道具は“似顔絵が書いてあるお面”。曲はもちろんセカンドアルバム『SOLEIL is Alright』から、森若香織が書いた「Sweet Boy」だ。
勉強やスポーツが得意じゃなくても、音楽に詳しかったりギターが弾けたりすれば私はそれでOK的な歌詞(と、個人的には解釈している)が、どれだけ音楽オタクの心を明るく照らしてくれることか。歌いながらそのお面を客席に放り投げる(プレゼントする)気前の良さもポイントだ。
続いてはサードアルバムから「アナクロ少女」。それいゆが大ファンだというフレネシが書き下ろした入魂の一曲だ。
新体操のリボンを使った振り付けはツアー初日の大阪公演で初披露されて満場のオーディエンスに言葉にならない感銘を与えたものだが、この東京公演ではさらにパワーアップし、舞台両脇に置かれた“お立ち台”に乗って豪快にリボンを振り回した。
曲の構造は基本的に各コーラスの前半が長調(メジャー)、後半が短調(マイナー)といっていいと思うが、それいゆが振り回すのは短調の箇所。哀調を帯びたメロディーと弧を描くリボンの一体感がどこまでも切ない。あの“おはガールちゅ!ちゅ!ちゅ!”の解散から5年を経て、再びこんなに魅力的なリボン使用ポップスが現れるとは。
中学生時代最後のアルバムだった『SOLEIL is Alright』から「卒業するのは少しさみしい」(スカートの澤部渡が作曲)を歌い上げた後は、サードアルバムにも入っている「ハイスクールララバイ」(イモ欽トリオのカバー)へ。
1981年の大ヒットだからリアルタイムでこれを知っているのはそれいゆの親世代かそれ以上の世代だろう。しかし新たなアレンジが施され、それいゆが歌うと、こんなに新鮮になるのだ。
「キャンディの欠片」(陽当モナカ作曲)、「恋のハッピーデート」(英国の姉妹グループ“ノーランズ”の楽曲だが、歌詞は石野真子のカバーバージョンに基づく)などはそれいゆのグロッケン演奏も楽しめるナンバー。
ヴィブラフォンともチューブラーベルズとも異なる、硬いんだか柔らかいんだか分からない、だけど涼やかな音が毛穴にしみる。歌う時、それいゆはマレットを縦に握っているのだが、自分にはそれがバトンのようにも見えた。
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