8月2日(金)より公開のキウェテル・イジョフォー初監督映画「風をつかまえた少年」の公開記念特別試写会が7月23日に都内で行われ、トークイベントにジャーナリストの堀潤と国際NGOプラン・インターナショナルの馬野裕朗氏が登壇した。
本作は、世界23カ国で翻訳(ほんやく)されたベストセラーを映画化したもの。2001年、干ばつによる貧困で中学校を退学になった14歳の少年が、当時人口のわずか2%しか電気を使うことができないアフリカの最貧国の一つ・マラウイで、自分の頭脳と手だけを頼りに発電に成功。家族と村の人々を救うだけでなく、自身も大学へ進学し、2013年にタイム誌の「世界を変える30人」に選ばれた。
世界各地の難民キャンプなどを取材してきた堀と、幾度となくマラウイを訪れたことのある馬野氏は、マラウイの文化や伝統、さらに世界における教育、貧困などの問題について、実体験を通し、幅広いテーマでトークを繰り広げた
イベントはまず、本作を一足先に鑑賞した感想からスタート。堀は「未来を作ってくれる新しい世代を、上の世代が押さえ込んでしまうのか、未来を信じて託せるのかということが描かれている」と作品について説明。
その上で、「僕らの普段の日常にも近い、世代の分断による閉塞感というか。それは先進国特有かというと実はそんなことはなくて。プラン・インターナショナルの現場を取材させていただいた中でも、女の子は生まれた時からこれをやる、男の子はこれをやる、家父長はこうだ、母親はこうなんだ、という状況がある」と指摘した。
また、「そんな中で、どんなふうに自分たちの価値を変えていくのか。決して上から目線ではなく、一緒に模索しながら知識のインフラとして根付いていくということが、描かれている映画。先進国が学ぶべき課題解決策が込められていると思う」と評価した。
原作については、「ウィリアムさん本人と、元AP通信の記者(ブライアン・ミーラー)の共著。本来のジャーナリズムのあり方である、まず現場があって、それを拡散させていくことや、イメージや言葉にならないものを共有する責任というのを感じた。すごくいいタッグで出来上がった作品なんだと分かりました」と、原作が生まれたきっかけを同じジャーナリストとしての視点で語った。
一方、馬野氏は「映画の中に出てくる『今日からご飯は一回にします』という言葉。私は、実際にアフリカのエチオピアやジンバブエで村の人たちが話すのを聞いた。そのたびに、胃がぎゅっと締め付けられるように苦しかった」と感慨深げにコメント。
続けて、「飢餓はいきなりパッと起こるものではなくて、じわじわ真綿で首を締められるような苦しいプロセス、命の危険を感じるところまで焦ってくる緊迫感、そういったことがウィリアムさんのチャレンジの背景として描かれている。辛いけれどぜひそこを見て感じてほしい」と熱を込めた。
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