また、堀は「マラウイの“絶対的貧困”と日本のような“相対的貧困”の国の課題は違うのでは?という問題提起がありますが、未来を描きづらい、何が欲しいのかが自分でも分からない、というのが先進国の課題である一方、何を必要としているのか、未来が明確なのが開発国だと思いました」と語る。
「ただ、やっていることは一緒なんですけどね。欲しい未来を誰かに説明できるくらい、自分とコミュニケーションがとれているだろうか?ウィリアム君は、どうすればいいのか考え続け、模索するために教育の機会を強く求める。そういった、『ビジョンを誰かに伝えられるか』ということも、彼の中に大切なアプローチとして見出しました」と本作から学んだことを明かした。
そして、教育プロジェクトでの初めての出張国がマラウイで、映画に映る当時の姿を知る馬野氏は「独裁政権が終わって、それまでは服の着方まで制限されるくらいだった状況から解き放たれた、開放的な空気はありましたが、飢饉が迫り、さらに輪をかけて大変だったのがエイズで2002~3年の平均寿命は40歳を切ったという暗い環境で、10代後半から20代の将来を担う人たちが亡くなっていく、という状況でした。現在は50歳にまで回復しましたが」と、映画では描ききれない当時の過酷な状況について明かした。
堀は「本作でも、教師の覚悟や働き方って出てきますよね。教育機会をどうやって確保するのかが課題だなと。取材したシリアでも、先生たちが亡くなってしまって、難民キャンプでも先生を確保するのが大変で。教育の技術がないばかりに威嚇的に負の循環が生まれてしまうという…。いかに教育の足場を確保するかということが難しいか感じました。そのような長いスパンで国の足場を支えるという意味でいうと、僕らの国はどのような支援ができるのでしょう」と問いつつ、「マラウイという遠くの離れた国についても、例えばGoogleで検索すると、日本政府のODAで、水の確保であったりさまざまな支援が行われている。それは僕らの税金が基になっている。実はすごくつながっているんだと気付けたり。我々が伝えていくことでも、そういう機会を共有したいですね」と締めくくり、映画では描かれない背景が大いに語られたイベントは幕を閉じた。
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