2019/07/30 11:16 配信
あなたは最新作『花筐/HANAGATAMI(2017)』から観るか、長編監督デビュー作『HOUSE/ハウス(1977)』から観るか?
もちろん、どちらでもかまわない。今回の特集の放送順でも、フィルモグラフィの時系列に沿っても、たとえ適当にシャッフルしても、大林宣彦ワールドはいつだって無類に楽しく優しい映画体験を約束してくれる。好きなところから入っていけば、“A MOVIE(大林映画の冒頭に毎回登場するタイトル・フレーズ。自分のフィルムはすべて個人映画であり、普遍映画である、という監督の思いが込められている)”のすばらしき世界に必ず誘ってくれるはずだ。
幼少期から活動写真機やセルロイド製のフィルムに親しみ、日本最初期の8mm小僧、自主映画作家として活動を始め、やがて超売れっ子CMディレクターへと越境した大林宣彦監督。常に日本の映像文化の最先端を走ってきた彼が、1977年に発表した初の劇場用長編が『HOUSE/ハウス』(8月4日夜9:00 WOWOWシネマ ほか)である。この画期的な快作は、いま観ても最高にフレッシュでパワフルだ。
ジャンルはなんと定義すればいいのだろう。超カラフルなホラー・ファンタジー。夏休みの珍騒動を描くみずみずしい青春映画。7人の美少女が戯れるキュートなガールズ・ムービー。“オシャレ”というニックネームのヒロインの女子中学生を演じる池上季実子(当時18歳。オシャレの母親も2役で務める)、TBS系ドラマ「コメットさん(1978~1979)」でのブレイク直前の新人、大場久美子(当時17歳)といったティーン・アイドルたちの魅力に加え、作家の笹沢左保、歌手の尾崎紀世彦、映画評論家の石上三登志など当時の文化人たちが役者として登場。視覚の快楽にあふれまくった怒涛のヴィジュアル攻勢を、ゴダイゴのポップな音楽が彩る。
公開当時は賛否両論あったが、若い世代の支持を集め、現在はカルト的に世界中で愛されている。例えば今年(2019年)、サンダンス映画祭やベルリン国際映画祭での受賞を果たした電通の映像ディレクターでもある新鋭、長久允監督の『ウィーアーリトルゾンビーズ(2018)』は、海外でも『HOUSE/ハウス』とよく比較されたという。また長久監督自身も、その影響に自覚的だ(なんとゴダイゴの音楽まで使っている!)。こうして『HOUSE/ハウス』の遺伝子は受け継がれ、昔と今の若者、両方を熱狂させているのである。
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