<映画アドバイザー・ミヤザキタケル連載>得体の知れない恐怖体験をあなたに!結末が読めないホラー映画2作品【ザテレビジョンシネマ部】

2019/08/16 07:00 配信

映画

『ゲット・アウト』(C) 2017 Universal Studios. All Rights Reserved.


人からどう見られているか、どう見られたいか。何かしらの負い目があればある程に、その呪縛に陥りやすい。登場人物たちのそういった想いで本作は成り立っている。映画としては最高だけど、人に宿る嫌な部分がこの作品を誕生させた。それだけに、「ああ、怖かった」の一言では済ませられない怖さがそこには在る。ラストシーンは、人によってハッピーエンドにもバッドエンドにも取れると思う。あなたの場合は一体どちらになるだろう。

『ヘレディタリー/継承』(2018)


『ヘレディタリー/継承』(C)2018 Hereditary Film Productions, LLC


サンダンス映画祭で絶賛され、全米を震撼させた、気鋭の映画スタジオA24製作、アリ・アスター監督作品。愛憎入り混じる祖母の死をキッカケに不可解な出来事に見舞われていく一家の姿を通し、理屈では推し量れない人の想いを描いた作品です。

『ゲット・アウト』を観ることで、既存のホラー映画とは一線を画した新感覚のホラー映画が今この時代に誕生していることをあなたは知ると思う。そういった作品群の中でも、本作は飛び抜けて頭がおかしい(褒め言葉)。が、『ゲット・アウト』によってある程度耐性ができたのなら、始まりから終わりまで終始得体の知れない怖さが漂い続ける本作にだって違和感なく入り込めるだろう。

異質なオープニングに始まり、ぶっ飛んだ描写ばかりで腑に落ちないことの連続だが、本作において確かなことが一つある。描かれているのは、家族の繋がりや人の想い。そういった理屈では推し量ることのできない目に見えぬ力の存在。非現実のファンタジーだと割り切ることなく観ていられるのは、誰もが知る家族の関係性が物語の下地に敷かれているからではないだろうか。関係がこじれたとしても、他人なら切り捨てれば良い。だが、家族だけはそうもいかない。血の繋がりだけはどうしたって切れやしない。

人の想いは、良くも悪くも他者の心に影響を及ぼすもの。そこにはらむ想いが善意であればプラスに、悪意であればマイナスに働く。言葉はただの言葉でしかないが、込められた念次第で大きく在り方を変えていく。スピリチュアル的な話をしたいわけではないが、たとえ姿形を失ったとしても、人の想いは「願い」や「呪い」となってこの世界に留まり続けるものではないだろうか。そして、本作で垣間見ることになるのは「呪い」の方。そういった念が登場人物たちの心を蝕み続けていく。思い込みや勘違いかもしれないが、目に見えぬモノの存在を信じざるを得ない事態が僕たちの日常にも訪れる。だからこそ、ぶっ飛び気味のストーリーであるにもかかわらず、日常の延長線上にある出来事だと信じられてしまうはず。