山崎ナオコーラ映画連載「映画マニアは、あきらめました!」第6回は天才アーティストの伝記「バスキア、10代最後のとき」<ザテレビジョンシネマ部>

2019/08/23 07:00 配信

映画

「バスキア、10代最後のとき」(C)2017 Hells Kitten Productions, LLC. All rights reserved. LICENSED by The Match Factory 2018 ALL RIGHTS RESERVED Licensed to TAMT Co., Ltd. for Japan


山崎ナオコーラが映画をテーマに等身大でつづるエッセイ。第6回は1980年代のニューヨークで活躍しながら27歳で早世した、若き天才アーティスト、ジャン=ミシェル・バスキアの伝記ドキュメンタリー「バスキア、10代最後のとき」( 9月9日夜7:15 WOWOWシネマ)を観る。

第6回「バスキア、10代最後のとき」


ドキュメンタリー映画「バスキア、10代最後のとき」は、ジャン=ミシェル・バスキアがまだ有名になる前、10代の終わりを過ごしたニューヨークのアート・シーンを、当時の友人や関係者に対してインタビューした映像をつなぐことで浮き上がらせた作品だ。若いバスキアは、宿なしで過ごし、いろいろな人と交流してさまざまなジャンルに関わっていった。それが鮮やかに描かれる。

17歳の頃から、地下鉄をペインティングし、街角の壁にも絵や文字を描いた。学校を退学し、家出もして、居場所をなくしたバスキアにとって、世界のすべてがキャンバスだった。ただ、勝手に描く行為はもちろんモラルに反するわけで、こっそりと素早く描く。バスキアは、「その急いで描く良さ」も大事にする。絵の具がたらりとこぼれるのも作品とするし、子供っぽい図柄も平気で描く。

友人たちの家を泊まり歩いていたので、当時のバスキアを知る人はかなり多い。語られる人物像はとてもキュートだ。そして、時折差し挟まれるバスキア本人の写真は、顔立ちがかわいらしく、表情はとぼけていて、体型がスラッとしていて、髪形は攻めていて、服も個性的で、大物アーティストになりそうな雰囲気ががんがん出ている。