<Dr.STONE>原作・稲垣理一郎×BURNOUT SYNDROMES・熊谷和海対談(後)「新しい“面白い”を楽しんでいただければ」

2019/08/25 12:00 配信

アニメ 芸能一般 インタビュー

楽しそうに対談を行ってくれた稲垣理一郎と熊谷和海(写真左から)撮影:Jumpei Yamada


――せっかくなので、熊谷さんが稲垣先生に聞いてみたいことはありますか?

熊谷:作画を担当されているBoichiさんの過去作を見たんですけど、すごい画力で本格的ないわゆる“SFを目指す漫画家”じゃないですか。そんな方を作画に据えるというのがすごくこの作品にとって革命的だなって感じたんです。

あれほどの画力のある人が“他人に合わせて作る”というようなある種の優しさみたいなものがあふれた作品だなとも思って、そこがみんなの心をつかむきっかけになっているんじゃないかなと。

そんな中で、どうしてBoichiさんにお願いしようと思ったのかを聞きたいです。

稲垣:原作者と漫画家の組み合わせって読者にとっては真摯(しんし)な話じゃないかもしれないんですけど、原作者が指名したら漫画家が受けてくれるという感じではなくて、そもそも原作者が漫画家をチョイスできるような立場ではないんです。

それに、この原作にどんな漫画家がふさわしいかなんて分からないですし。もっと言うと、漫画は原作者の物ではなく、漫画家の物なんです。絵描きの魅力を出すというのが原作者の仕事だと思っているので、この作品にこの作画を組み合わせるって決まったら「じゃあ、どう作るのか」という作り方なんですよ。

熊谷:話の大筋は決まっているけれども、組み合わせが最初にあって小さなニュアンスとかはそれからという感じなのですね。

稲垣:(大筋以外は)どんどん変わっていきますね。特に週刊連載だと。この作品の場合でいうと、最初からBoichiさんに決まっていたわけじゃなくて僕のネームがまずあって、普段から僕が「Boichiさんの絵ってすごいよね」って言っていたのを編集者の1人が覚えていて、Boichiさんにお声掛けして組むことになったんです。

そんな中で、水力発電が始まる回(第6巻収録)に水車が登場するんですけど、僕のネームの粗書きと比べたらすっごいんですよ。

Boichiさんによると工学、力学を踏まえてちゃんと動くように設計されているらしいんですけど、僕的には「スゴすぎるだろこんな水車!」って声が寄せられるんじゃないかって心配していたら、人気が急上昇ですよ! 

BoichiさんのSFの画力に僕のネームが引きずられて漫画が変わっていくんです。その結果、僕もそれがありだってことが分かれば「そこを生かしたものをやろう」ってなっていく。

だから、Boichiさんを付けたらベストマッチだったというよりは、どうやったらBoichiさんの絵を生かして読者にとって一番面白い漫画になるだろう、と“ベストにしていく”という作業ですね。

熊谷:水車のところなんか特に画力の重要性を感じます!

稲垣:そうなんですよ! 僕らは「画力にぶん殴られる」って呼んでるんですけど。

熊谷:確かに画力で説得させられるというのはありますね。

稲垣:絵のうまい人の「画力ぶん殴り度」はすごいですよ。「DEATH NOTE」とか小畑(健)さんの絵じゃなかったらギャグ漫画ですから。

大場(つぐみ)さんのネームが幼稚なのを小畑さんが説得力を持たせているという意味じゃなくて、小畑さんの絵で面白くするためにはあの大場さんのネームだったんだと思います。

やっぱり最終的に読者が見るのは僕のネームじゃなくて漫画の方なので、どういう絵が入るのかというのは絵師の力だし、主役が漫画家であるというのはそういうところですね。

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