棚橋弘至、安田顕のあの作品も! 映画アドバイザー・ミヤザキタケルが厳選した9月初放送映画3作品<ザテレビジョンシネマ部>

2019/09/01 07:00 配信

映画

『愛しのアイリーン』(2018)


『愛しのアイリーン』 WOWOWシネマ 9/22(日)よる10:00他 (C)2018「愛しのアイリーン」フィルムパートナーズ


『宮本から君へ』などで知られる新井英樹のコミックの初の実写映画化で、『ヒメアノ~ル』(2015)の吉田恵輔がメガホンを取っている。年老いた母ツル(木野花)と認知症の父、源造(品川徹)と暮らす42歳・独身の岩男(安田顕)が、フィリピンのお見合いツアーで出会ったアイリーン(ナッツ・シトイ)と結婚したことで変化していく家族の関係性を通し、一筋縄ではいかない岩男とアイリーン、ツルと岩男の愛のあり方を描いています。

あなたは愛を所持しているだろうか。パートナーとの関係性において、愛は存在しているだろうか。僕は恋することならいくらでもあるけれど、愛にたどり着けた試しがない。正確には、家族が注いでくれる無償の愛しか触れたことがない。それも、家族と離れて暮らすようになったからこそ感じ取れるようになったもの。岩男のようにずっと実家暮らしだったら、その価値を曲解したり見誤ることもあっただろう。愛を誓って結婚しても、別れる人たちがたくさんいる。消えてしまったのなら、端からそれは愛ではなく恋でしかなかったということ。一時の感情の高ぶりや性欲を愛だと錯覚していただけ。そもそも愛を確信して付き合ったり結婚するなんてこと自体、無理な話なのかもしれない。

『愛しのアイリーン』(C)2018「愛しのアイリーン」フィルムパートナーズ


それが愛であるか否かは、時間をかけて共に生きていかなければ確信できない。一発で到達できる人もいれば、何度も間違えないと到達できない人もいる。でも間違えることを恐れて足踏みしていたら、到達できない。世間の目もあるが、最終的に愛にたどり着けるのであれば、始まりは何だって良いのだと思う。日常において岩男らを目にしたらクレイジーにしか思えないけど、映画だからこそ彼らの心にだって寄り添える。そして、自身の愛がいかに不鮮明なものであったのかに気付かされる。ズタボロになりながらも一つの愛のあり方を示した愛おしい作品です。