落語から題材を取った作品を数多く送り出している劇団ラチェットレンチが、9月5日(木)~9日(月)、東京・ザムザ阿佐谷にて新作「幕末サンライズ」を公演する。
劇団ラチェットレンチは、現在は劇団の作家に専念している大春ハルオらを中心に2010年に結成。2014年「落伍者。」で池袋演劇祭優秀賞を受賞。2018年には「ラクゴの国へ、いらっしゃ~い!」と題して落語作品3部作を一挙上演するイベント公演も開催している。
今回、劇団が挑むのは、落語×幕末の掛け合わせ。時は幕末。吉田松陰が、まだ松陰ではなく寅次郎だった時代。歴史の表舞台に出る前に、江戸で出会ったダメダメ落語家・柳亭燕枝(えんし)に弟子入りしていたという奇想天外な物語をもってきた。松陰、燕枝、高杉晋作ら特徴あるキャラクターを多数登場させて、心温まる舞台を展開する。
新作公演直前の稽古場で、前半は主演の酒井孝宏、小笠原游大、劇団主宰の井上賢吏(たかし)を中心に、ここに脚本・大春ハルオ、演出・三浦佑介、劇団員の片岡萌も加わる形で話を聞いた。
――まず井上さんから主演二人の紹介をしていただけますか。
井上:酒井さんが演じる今作での吉田松陰(寅次郎)は、真っすぐ過ぎて、周りからしたらちょっとおかしな人に見える。動乱の世の中で、その真っすぐさを見せたことによって、動乱を正そうとした若者が付き従い、彼らに多大な影響を与える。命をもって自分の思いを伝えていった人ですね。
小笠原さんは燕枝役。いわばフーテンの寅さんのようなキャラクターで、ふらふらしてる。松陰に出会って自分の落語観を変えられ、動乱の中に踏み込み、維新の心を持つんですけど。この人なりの戦い方、生き方に気付いていく。松陰の影響を自分なりに消化して、また新しい時代に向かうという人物です。
――酒井さんもご自身の役柄を語っていただけますか。
酒井:吉田寅次郎は、熱い塊がそのまま胸の中にドーンとある男。激動の時代に生きる焦りがあって、そんな中で落語に出会う。そのことが物語の核になっているんですけど、落語の何かに可能性を見いだし、もしかしたらこの先の日本の突破口になるかもしれないと勝手に思う。その焦りと情熱みたいなものが素直に出せたらいいなと思います。
人間としては、人が好きで、あまり垣根をつくらない。燕枝の周辺に人が集うところは、「男はつらいよ」の「とらや」みたいな雰囲気があるんですよ。その場所に武士階級の松陰が入った時の化学変化のようなものをうまく出せるといいなと思います。
――小笠原さん、燕枝はどんな人物ですか?
小笠原:実際にいた噺家ですけど、それは意識せずにやってます。滑稽話ばっかりやる噺家。ある程度のプライドも持っているんだけど、全然売れないし、人気もない、周りからの評価も低い。だからふらっふら生きている。
人からの影響をとても受けやすくて、ある人がもっともらしいことを言ったら、そうかもしれないって、すぐ思ってしまう。だから寅次郎に「日本は大変なことになってるんだよ」と言われて、「そうなのか」ってすぐ傾倒しちゃう。
燕枝も人が好きで、彼の元には燕枝を好きな人が集まっている。そういうつながりをすごく大事にしている人物だと思いますね。
――井上さんは久坂玄瑞役。
井上:史実だと、松陰の過激さを少し落とした上で、なんとか横のつながりを作って国を変えていこうとした人ですよね。身長180cm、イケメン、声もいい。詩を読んでいると美女が集まってきたっていう逸話がある。僕とは真逆な感じ(笑)。
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