9月5日(木)~9日(月)、東京・ザムザ阿佐谷にて新作「幕末サンライズ」を公演する劇団ラチェットレンチ。
新作公演直前の稽古場で行ったインタビュー。前半の役者陣へのインタビューは、井上賢吏(たかし)代表のいいところを主演の二人が盛り上げて終わるという奇妙な形になったが、ここからは、脚本・大春ハルオ、演出・三浦佑介に作品内容を深く聞いた。
――三浦さんが関わるようになったきっかけを聞かせてください。
三浦:大春さんと出会ったのは僕が役者をやってる時で、大春さんも役者で、ある時、アマチュア落語をやってると聞いて。劇団で落語の芝居をやろうって言うと劇団員が反対するんだよって嘆いていたんです。僕は「絶対面白いじゃないですか」と大賛成。落語と演劇の組み合わせって、当時あまりなかった。エンタメと落語を融合させてる芝居は少なかった。それから何年か後に演出することになりまして。
――どの作品から?
三浦:「落伍者、改」(2015年)です。「改」で初めてやらせていただいて。それまでラチェットレンチはずっと大春さんが作・演出で、他の演出家を入れることはなかった。
――参加を決めた理由は何ですか?
三浦:それは大春さんです。大春さんのことを面白いなって思っていた。僕は演出が生業で、いろんなところで仕事していますが、基本的には人で選ぶ。この人とやると面白いなと思えばやるし、どんなに条件が良くても、人が嫌だなと思ったらやらないと決めてる。モチベーションが上がらないので。どんなに環境が悪くても、この人と一緒にやれるのだったら面白いと思っていれば、その人がいなくならない限りは楽しい。
大春さんからお話をいただき、台本を読ませてもらったら「面白い!」とすぐ思った。落語はもともと好きだったんですよ。僕は下町の出身ですし。
大春:「落伍者、改」も終わって、サスペンスを挟んで、その次に何かやろうってなった時に、劇団内はサスペンスに行かざるを得ない空気だったんですよ。でも僕の中では、昨今の現実の事件のほうが面白いじゃないかという思いがあり、それで佑介くんと話したら、「落語で良くないですか?」と言ってくれて。
その日のうちに劇団員に「ごめん、やっぱり落語にする」と伝えたら、劇団員は「ふざけんな!」って。「サスペンスをやります」とすでにオファーを出している役者の人もいたけど、その人たちにも「すみません! やっぱり落語をやります」と断りを入れて、それで出来上がったのが「ラクゴ萌エ」(2017年)です。
三浦:焚き付けた責任もあるから、ちゃんと全員が満足できるくらいの稽古付けるぞって思いながら挑みましたよ。
大春:僕自身、一度「落語のラチェットレンチ」っていう風に世間を思わせたい気持ちがあったので、もうやっちゃおうって「ラクゴ萌エ」をやって、落語作品3本立てのアンコール(2018年「らくごもん。」「ラクゴ萌エ」「与太郎、打ち上げ花火」)をやって、今に続いてる。劇団の中には「落語もうやめようぜ空気」ももちろんあります。
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