――今回、参加した「蜷川組」の印象は?
一言で「私、これが終わったらどうやって生きていけばいいのか」って思ったぐらい、自分の全てを懸けて参加させていただいた作品。
不思議なことに初日からしっかりと空気が出来上がっていて、セットに入った瞬間から「蜷川組」なんです。その気にさせられてしまうというか「実花さん、すごい!」って思いました。
物を作るプロフェッショナルが集まるとこういうふうな感じになるんだなって。その雰囲気にちょっとのまれていたような感覚はありましたけど、本当に楽しい現場でした。
――蜷川さんの演出で印象に残っていることは?
お芝居について、あまり細かく言われることはありませんでした。
実花さんは同性として女性のことを理解できる部分、掘り下げる部分があったと思うんですけど、それと同時に子どもを家に置いて外に働きに出ているということや、ご自身のお父さんの姿を見てきたということもあったからなのか、太宰に対して気持ちが入る瞬間があるみたいなことを仰っていたことがすごく印象に残っています。
俳優部同士でお互いの感情を引き出し合うことはあったりするんですけど、もしかしたら実花さんのそういう男性的なところに引き出されていた部分もあったんじゃないかなと思いました。
実花さんは女性の監督ではあるけど、どこか男性的な部分もありつつ、女性のタフなところや弱さも知っているんです。うまく表現できないですけど、男性であり女性である監督だったような気がします。
――だからこそ、どうしようもない男でありつつも、どこかチャーミングというか不思議な魅力を放つ太宰治が生まれたのかもしれませんね。
太宰さんに関しては、もう許すしかできないですもんね(笑)。私が演じた富栄さんもちょっと特殊というか、怒りというものが太宰さんだけではなくて自分の中にも向いているようなところがあったりして。
物語の後半では、とにかく太宰さんの子どもが欲しくて子作りに勤しもうとするんですけど、たぶんそれと同時に喪失感も覚えていたと思うんです。
だからこそ、自分の中に決定的なものが欲しかったのかもしれません。そういう意味では富栄さんも自分勝手なところがあったのかなと。
撮影前に富栄さんが書いた日記を読んだりしたんですけど、理解できる部分がありつつも腑に落ちるものがあまりなかったんです。どちらかというと、何でこんなふうになっちゃったんだろうって客観視していました。
だけど、現場では小栗さんが演じる太宰があまりにも圧倒的で。あの姿を目の前にすると理由なく引かれていくものですし、そこにすがりたいという気持ちにもなる。ちゃんと自分が生きていると感じさせてくれる存在だったような気がします。
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