山崎ナオコーラが映画をテーマに等身大でつづるエッセイ。第7回は、交通事故で両親を亡くし、温泉旅館を営む祖母のもとで暮らし始めた小学生の少女の奮闘と成長を綴る「若おかみは小学生!」(10月4日夜9:00 WOWOWシネマほか)を観る。
まさに、「子どもも大人も楽しめる」という映画だった。
「若おかみは小学生!」は、青い鳥文庫のシリーズの小学生向けノベルがアニメ映画化された作品だ。タイトルだけは知っている、という人が結構いるのではないかと思う。
私も、書店で展開されているのをよく見かけていて、「へえ、最近はこういう本が子どもに人気なんだなあ」とぼんやり思っていた。とはいえ、自分はいい年をした大人だし、自分の子どもは3歳と0歳でまだ対象年齢ではないので、自分に関係する本とは思えず、いつも素通りしてしまっていた。
それなのに、どうして今回この映画を観たのか?
きっかけは、夫が「これ、観た方がいいんじゃないかな」と言ったからだ。どうやら、夫の知り合いの男性が「泣いた」らしい。私もその人に会ったことがあり、渋い雰囲気の「いい年の大人」の方だったから、子ども向けアニメ映画を観て「泣いた」というのが意外というか、面白く思えて、「じゃあ、私も観てみたい」となった。
そうして、夫と3歳児と0歳児と共に映画を観始めた。
私はファンタジックでユーモラスな作品を想像して鑑賞に臨んでいたので、のっけからシリアスなシーンになって、「あ」と思わず叫んだ。「死が描かれるんだ」「意外だね」と言い合って夫と顔を見合わせた。
子ども向けの作品で、悲し過ぎるものは描かれないと思っていた。しかし、「若おかみは小学生!」は喪失感が日常の中にずっとあるのだ。
ただ、その描き方は絶妙で、子どもに衝撃を与えるようなものではない。決して残酷ではなく、かと言って、死を軽く扱うのでもない。
ただ、「小学生にも、こういうことは起きる。起きたことを受け入れて、生きていくのだ」ということが自然な形で描かれている。考えてみれば、身近な人が突然いなくなる、いなくなった人と向き合う、ということは、大人も子どももみんなが経験することなのだ。だから、隠さず、配慮して描けば、誰もが感動する映画になるわけだ。
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