母の遺骨を食べたがる極度のマザコン漫画家、車好きの関西ヤクザ、派手好きなスカウト会社社長…。演じる役はどれも強烈なものばかり。それなのに、クセがまるでない。演技の強度は断トツだが、驚くほど画面に溶け込んでいる。それが、安田顕という役者だ。
この男、どんな役でもするりと演じてしまい、まるで目立たない。大体、強烈なキャラクターを演じる役者はジャック・ニコルソンとかホアキン・フェニックスとか、アッパーな個性を持った者が多いのだが、ヤスケンは“我”からはまるで遠い人物だ。まるで最初からそこにいたかのように、画面に溶け込んでいる。
イメージが浮かばない男。言い換えれば、何にでも染まれる天才。役者にはすべからく役との相性があるものだが、ことヤスケンにおいてはその常識は通用しない。当然ながら世間体を気にしたNG事項もない。それを鮮烈に感じさせられるのが、4本目の主演映画『愛しのアイリーン(2018)』(9月22日夜10:00 WOWOWシネマほか)だ。本作で、彼は他の役者だったら絶対に引き受けないだろう狂いに狂ったキャラクターをさらりと怪演している。
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