――主人公のレネーは、自分の容姿にコンプレックスがあって、自分を変えたいけど自信がない。そんなときにハプニングで頭を打って気を失ってしまい、そこから目覚めた後、見た目は何も変わらないのに、自分が絶世の美女に変身したと勘違いして、自信に満ちあふれた女性へと変貌していきます。
小沢「あのポジティブ・モードになってからの彼女は、まさに直美みたいに、すごく前向きで、常に気の利いた受け答えができるようになって、何も気にしないで生きていくじゃん。あれがすごくいいんだよ」
――そんな大絶賛の今回の作品の中で、小沢さんがシビれた名セリフはなんでしょうか?
小沢「子どもの頃は――誰もが自信に満ちてる」
※編集部注:ここから先はネタバレを含みますのでご注意ください。
――再び頭を打って気を失ったことで元の自信のない女性に戻ってしまったレネーが、最後に勇気を出して大勢の観衆の前で自分の思いのすべてをプレゼンするクライマックスでのセリフ。「子どもの頃は――誰もが自信に満ちてる(中略)でも、あるきっかけで疑問を抱き始める」「何度も自分を疑ううちにすべての自信を失う」と話し、続けて「子どもの頃の自信を失わないで」「だって私は私だから!」「私であることを誇りに思う!」と女性たちに呼び掛けます。
小沢「あのシーンは、マジで涙出てきたよ。最後に『あなたたちは美しい!』『あなたたちがこの新商品(レネーがプレゼンする商品)の“顔”で――リリー・ルクレア(レネーが勤める高級コスメ会社)の“顔”よ!』って言うじゃん。あそこが、ホントに泣ける」
――まさに、あのプレゼンの長セリフのためにそれまでの2時間弱の物語があった、という感じでした。
小沢「今はTwitterとかInstagramとかがはやっててさ、とにかくみんな自分に自信がないから、周りの人へのアピール合戦ばっかりじゃん。みんなに好かれるコメントしなきゃとか、みんながいいね!をしてくれる食事しなきゃとか、ホントにくだらないなと思ってて。自分の人生なんだから、周りの人の評価なんて関係ないんだよ。そんなこと気にしないで、みんなこのレネーのように自分がナンバーワンだと思って生きればいいんだよ」
――ああいう自己肯定感って本当に大事ですよね。特にこういう時代だからこそ。
小沢「そこでふと気付いたんだけどさ、このレネーって、俺なんだよね」
――どういう意味でしょう?
小沢「例えば徳井君(お笑いコンビ、チュートリアルの徳井義実)って、一緒にいるとめちゃくちゃカッコいいんだけどさ、俺はそんな徳井君にも引けを取らないほどモテるのね(笑)。それって、俺が自分に自信があるからなんだよね」
――え~と、どこで頭を打ったんですか?
小沢「頭打った覚えはないんだけどねぇ。もしかして、小学校の時に野球やってて、レフトフライを捕ろうとして壁に激突したことがあったから、あの日からかもしれない(笑)」
――でも実際、自分に自信がある人はモテますよ、男でも女でも。
小沢「今まで、自分に自信があるなんて思ったことなかったけど。この映画を観て、それに気付かされたよね」
――他にも名セリフはたくさんありましたね。
小沢「俺が好きなのは、最後にレネーが、けんか別れしてた彼氏の所へ駆け付けるところね」
――監視カメラで彼氏のイーサン(ローリー・スコーヴェル)に映像を見られてると知らずに、レネーが鼻に入ったゴミをほじりながら「会いたくないだろうけど私の話を聞いて」と玄関先で必死で呼び掛けるシーンですね。
小沢「そうそう。で、外に出てきたイーサンが鼻のゴミを取ってあげると、彼女は『ずっと見えてた? あれカメラ?』って驚くんだけど、その時にイーサンが言うセリフが、『ずっと君が見えてた』。あれって、ダブル・ミーニングになってるんだよね。いま監視カメラで見てたって意味だけじゃなく、『僕はずっと君の本当の姿が見えてたんだよ』って」
――セリフがいちいちシャレてますよね、この映画。
小沢「あと、あそこもいいよね。デート中にレネーに『キスする気?』って聞かれたときに、イーサンが『僕も君のことをもっと近くに感じて――こう伝えたい』って言いながら唇を近づけて、『僕は…君にキスしたい』って。俺さ、ああいうのが大好きなんだよ!(笑)」
――いちいち刺さってますね、小沢さんに。
小沢「すごい刺さったわ、この映画。人生のベスト10にも入るかもしれないな。たぶん、これを超える映画はもう出てこないと思うから、この連載は今回で最終回に……(笑)」
――いやいや、そんなことないです! まだまだいい映画は次々と出てきますから。
小沢「とにかく今回は、全員に観てほしい作品でしたね」
愛知県出身。1973年生まれ。お笑いコンビ、スピードワゴンのボケ&ネタ作り担当。書き下ろし小説「でらつれ」や、名言を扱った「夜が小沢をそそのかす スポーツ漫画と芸人の囁き」「恋ができるなら失恋したってかまわない」など著書も多数ある。
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