山崎ナオコーラが映画をテーマに等身大でつづるエッセイ。第8回は、家族同然に過ごしてきた猫を友人に託す旅をする青年の姿を描いた、有川浩のベストセラー小説を福士蒼汰主演で映画化したロードムービー「旅猫リポート」(11月8日夜9:00 WOWOWシネマほか)を観る。
私は、猫とも犬とも生活を共にしたことがない。小鳥や金魚は飼ったことがあるが、大きな動物は飼った経験がない。心を通わせるような付き合いを人間以外としたことがない。
だから、猫と人間の付き合いに疎いところがあるし、猫を飼っている友人たちの心の機微を察することができないところもある。
そんな私が、猫がメインに出演している映画「旅猫リポート」を観た。「旅猫リポート」は、人間ドラマだ。
猫の視点を借りて人間関係を浮かび上がらせる。
「人間好き」な映画だと思う。
もしかしたら、いわゆる「猫好き」の人は、もっと猫らしさを、という意味でちょっとだけ満足できないかもしれない。この猫は喋るし、「猫の実態を描く」という方面にはそこまで力が入れられていない。
だが、この映画は、「猫が人間にどの程度の力を及ぼすか知らない」という私のような観客に、「猫は生活を共にするだけで人間を幸せにする」ということを存分に教えてくれる。
だから、猫好きの人が、もし、「なかなか周囲の人に猫の大事さが伝わらない」という苛立ちを覚えているとしたら、この映画は世の中に「人間にとって、猫がどれほど大事か」を伝えてくれるという意味で大きな力を持っているので、ぜひ、そこを観て欲しい。
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