染谷将太、食で家族がつながる物語に「食べるという行為は“生”を感じられますよね」

2019/11/02 06:00 配信

映画 インタビュー

映画「最初の晩餐」で主演を務めた染谷将太撮影=横山マサト

麟太郎は自分が分からないことを分かっている人間


――染谷さんが演じられた麟太郎は東家の次男で、東京でカメラマンをしているという設定です。彼をどう理解して演じられたのでしょうか?

麟太郎は家族に持て余した感情を抱いていて、家族のことが分からないと思っています。さらに仕事にも悩んでいて、自分の今やっていることや将来に対しても分からないでいます。でも、麟太郎は自分が分からないことを分かっている人間で、そこが唯一の救いなのかなとも思います。

――劇中では少年時代の麟太郎も描かれますが、あのピュアな少年がなぜこんな暗い表情するようになってしまったのかが気になりました。

多分、東京に出て、細かい挫折をたくさんしたんでしょうね。でも、麟太郎には挫折を挫折と認める勇気がなく、その不安からやさぐれているのだと思います。とはいえ、根っこの部分は昔と変わらないピュアな心を持っていて、単純にどうしていいか分からないから表面的にはやさぐれているのだと思いました。

――麟太郎の不安からくるやさぐれ。染谷さんはこれまでの俳優人生で、そういった不安を感じたことはありますか?

基本的にこの仕事は不安だと思っているので。それが根本にありすぎて日々意識することはないですけど、そういうものだと思っています。身一つの仕事ですし、何かが起きていつできなくなるかもわからない。本当に雇われ仕事なので、採用してもらえないと職場にも行けませんからね。

――人と向き合うことを避けていた麟太郎の変化も映画の見どころだと思います。演じるうえで意識されていたことはありますか?

意識していたことはとくになく、徐々に何かをつかんでいくというよりは、ラストカットまでつかめそうでつかめないぼんやりした感じでした。そこは麟太郎の分からないというところにリンクしていたように思います。