藤原くん、井上くんの2人の寅次郎については、せりふがたくさんあって細やかな演技が求められる大きな役を演じた経験が全くないので、当然カチカチに緊張していました。
小寅の藤原くんには、テストと本番の時だけ「集中」するように、この1点だけ何度も言い聞かせました。藤原くんの一番の魅力、天真爛漫で素直な部分を萎縮させないように、なるべく放っておこうという意図です。
藤原くんは強烈な人懐っこさと素直さで、どんどんキャストの方たちと「家族」になっていきました。そうすると甘えてダレてきたりするので、そのたびに「寅! 寅! 集中だぞ! 集中!」と引き締めましたが、合計して1万回くらい「寅!」と言ったのではないでしょうか。撮影の終わりごろにはちゃんと自分で集中するようになって、こっちがちょっとさみしく思ったくらい、目まぐるしく成長していきました。
大寅の井上くんはさらに大変だったと思います。京都生まれ京都育ちの井上くんは東京の言葉からすべて「練習」しなくてはなりませんでした。しかも「超」真面目な性格で礼儀正しくいつも緊張した様子で静かに座っていて、ケラケラ笑いながら自由自在にスタジオを駆け回る藤原くんの性格と「足して2で割れたら…」と何度思ったことでしょうか。なので井上くんには、テスト、本番以外の時も「笑顔」でいるようにチャレンジしてもらいました。すると衣装や現場の雰囲気も手伝って、次第に作った笑顔ではなく、優しい男気のある寅さんの演技が自然と出てくるようになり、最後はさくらちゃんと一緒に朝から晩まで笑顔で演技していました。
森七菜さんは、まだ18歳だというのに、素晴らしい演技力でびっくりしました。
ラグビー日本代表の「準備したプレー」のように、脚本をじっくり読み込んで自分で考え練習してきた成果なのでしょうか、せりふの出し方、動作、アドリブ的な表情すべてが見事にハマっていく感じでした。ベテランの俳優さんのように、アイコンタクトするだけでこちらが何かを言う前に意図が伝わっている感覚があって、びっくりでした。
なので演出も欲を出し、さとこの活発さが寅次郎を「恋の誤解」に導くように、グイグイ押せるところは押していくように、特に寅との距離感など話し合いながら撮影を進めていきました。
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)