大宮エリーが自作詩の朗読会を開催「私は朗読を通して“落語”がやりたいのかも」

2019/11/08 15:00 配信

芸能一般

「『虹のくじら』はもともと、声に出して読んでもらうことを想定して作った絵本なんです」


大宮エリーの絵と詩でつづられる絵本「虹のくじら」(美術出版社)


――人間の想像力が低下してきていることに対する危機感は、いつごろからあったんでしょうか。

大宮エリー:何年か前、「課外授業 ようこそ先輩」(1998~2016年、NHK Eテレほか)という番組に出たとき(※2015年5月22日放送)、子どもたちはみんな素晴らしい感性を持っていたんですよ。だけど、それをこっちが引き出していかないとダメなんだっていうことを感じて。世の中が便利になってきている分、自分で何かを発信する力が低下してきているのかなと思ったし、またそれをトレーニングする機会もないんだろうなって。

私たちが小さい頃って、石を置いて「これ、ビルね」なんて言いながら、架空の街を作って遊んでましたけど、今はiPadを使えばすぐに本格的な街並みの映像が出てくるじゃないですか。デジタルな想像力ももちろん大切だけど、もっと地に足の着いた、ゴツゴツした想像力もあった方がいいと思うんですよね。

――朗読会のアイデアは、絵本を出版される前から構想されていたわけですか。

大宮:というより、「虹のくじら」というのは、もともと“朗読するための絵本”なんですよ。同じ言葉を繰り返したり、擬音が多かったり、口に出すと楽しくなってくるような言葉を選んでる。声に出して読んでもらうことを想定して作った絵本なんです。

――確かに、言葉のリズムが心地良いですね。

大宮:例えば、冬の木の話を書いた「十和田の冬」という詩は、〈冬の木にふれてごらん、すごいよ / ぱちぱちしてる / どくどくしてる〉といった感じで対句になっていたり。この詩は、冬の木は死んだように見えているけど、実は翌年の春に向けて準備をしているんだよっていうことを書いたんです。日々の生活の中で、何か調子が悪かったり、何だかうまくいかないなと思っている人に、この詩を声を出して読んで、元気を出してもらえたらうれしいなと思って書いた詩なんですね。

そんなふうに、一つ一つの詩に、私なりにメッセージを込めているつもりなので、まずは一度読んでもらって、自分にとって必要な詩を見つけてもらえたら。どんな些細なことでもいいので、何かを感じてもらえたらうれしいです。

――読み手が自由に解釈できるところが詩の魅力ですからね。

大宮:最近は、西日本豪雨の災害に遭った所へ行く機会が多いんですけど、「金木犀のことば」という詩を読んで泣かれる方が多いんですね。この詩には、〈自尊心を持ちなさい〉とか、〈自分を傷つけてはなりません〉という言葉を使って、自分を大切にしてほしいというメッセージを込めました。日本人って、自分よりも他人のことを優先してしまいがちじゃないですか。それは美点でもあるけど、たまには自分を優先させて心のケアをしましょうよ、という。そんな思いが、災害に遭われた方たちにも伝わったのかなと思って、すごくうれしかったですね。