『ファミリー・ツリー』(2011)、『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(2013)のアレクサンダー・ペイン監督作。増加の一途をたどる人口問題を解決すべく、人類を大きさ13cmにする技術“ダウンサイズ”が発明された少し先の未来。より良い生活を追い求め、妻と共にダウンサイズすることを決意した主人公ポール(マット・デイモン)の紆余曲折を通し、人生において幸福を得るためのヒントを与えてくれる作品です。
『アンダー・ザ・シルバーレイク』を経て、一歩踏み出すまでの険しさと価値をあなたはおそらく垣間見る。だけど、一歩踏み出す=ゴールというわけではない。言わずもがな、人生はトラブルやイレギュラーや選択を迫られることの繰り返し。
人生の大きな一歩を踏み出しダウンサイズすることを選んだポールもまた、その先で新たな壁に直面していく。2本を併せて観ることで、人生は絶えず自問自答の連続で、良いことも悪いことも等しく訪れ、その上で自分にとっての幸福が何であるのかを模索していくことに意義があるのだと気が付けるはず。
誰もが幸せを追い求めて生きている。絶対とは言い切れないが、それは他人から与えられるものではなく、自らの手でつかみ取るものだということも重々承知。しかし、約束された幸せをチラつかせられたのなら、そんなうまい話などないと分かっていながらも揺らいでしまう。幸せかどうかなんて、本当は後にならないと気が付けないはずなのに。
不器用で損な生き方しか選べないポールを見ていてそう思った。母の介護のため大学を中退し、医者になる夢を断念した彼は負い目を抱えながら生きているが、学んだ知識や技術を母のために活かせていたのは事実。多くを無駄にしてしまう人もいるが、彼の場合はそうじゃない。自分を認めることができないだけで、幸せの扉をノックする権利は持っていた。が、他者から与えられるものにすがってばかりで、その事実に気が付けていない。
高望みすることも時には大事だが、これまで培ってきたものに目を向けることも時には重要。己自身の中に、幸せになるための可能性はいくらだって宿っている。キッカケを逃しているのであれば、原因もまた己自身の中にある。
最後にポールは選択を迫られる。その選択が人として最善、最良であったのかは分からないが、彼個人の幸せを追求するのであれば正しい選択であったはず。
多くの不要な情報であふれ、本当に必要なものを見誤ってしまいがちな現代。そんな世界であっても最良の道を見据え、自分にとっての幸福を追求していくこと。そこに宿る価値や人生の醍醐味を感じさせてくれる2作品、ぜひセットでご覧ください。
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