11月17日、伊東歌詞太郎が、『ワンマンLIVEツアー2019「君住む街へ」阪名東編~マイホームタウンへ~』のファイナル公演を豊洲PITにて開催した。最新作『Overture』(ライブ会場限定CD)全収録曲を含む20曲。オリジナル楽曲のみならず、原点であるボカロ曲カバーも盛り込んだ、キャリア網羅的な充実のセットリスト。「こんなに多くの人の前で歌うの、僕初めてだと思います」と序盤で早くも感極まりながら、「今までの全部のライブを今日、過去にしようと思ってる」との力強い決意表明も。喉の手術から復帰を果たしたのが2018年。挫けずに夢を追い求め、2019年の今、自己最高を更新し続けている事実は、彼の歌に一層のリアリティと説得力を与えている。
星空を思わせる仄暗いステージに、真っ白なシャツ姿で軽やかに登場した歌詞太郎。「ようこそ!」との呼び掛けを交え、まずは落ち着いてスタート地点を定めるように「北極星」を歌い届けた。「つながって」ではカラフルなバルーンがフロアを転がり、「惑星ループ」ではレーザーがフロアを貫く。メディアには顔出しをしていないが、追加の3都市公演ではカメラクルーを導入し、その表情や動きが大写しに。「365」では舞い散る花びらのイメージが映し出されるなど、曲に合った映像表現も効果的。だが、様々な演出以上に胸を打ったのはやはり、歌詞太郎の歌声である。一言一言をはっきりと発音し言葉を届けようとする歌い方、絶唱しても終盤まで衰えることのない声量、高低を自在に行き来する音域、艶やかで凛とした声の響き。すべてにおいて破格の歌声は、オリジナルもカバーも分け隔てなく歌に命を吹き込み、生きた言葉となって聴き手の心に飛び込んでいく。
小気味よい語り口のMCも大きな魅力で、ツアー中の笑い話も交えつつ、ブレない考えも表明。それは「音楽と人格は切り離せない」というもので、「僕は24時間盗聴されたって、盗撮されたってかまわないと思ってる」と半ば真顔で語り、音楽に全人生を捧げる覚悟を熱弁。「来年以降もいい曲をつくっていいライブをして、もっといい景色を皆と一緒に、“あなたと”一緒に見たい。僕には目指しているステージがある」と内なる炎を覗かせた。ラストに、「まだまだ叶えたい夢がある」との野望を込めた「僕だけのロックスター」を、自ら拳を突き上げながら熱量たっぷりに歌唱。高くジャンプして演奏を止めると、大拍手に包まれながら、歌詞太郎はファンの側を称えるようにいつまでも拍手を送り続けていた。
ツアー終了後も、12月からは2度目の中国ワンマンLIVEツアーが控えている。「今日というこの日を礎に、もっと最高のライブを当たり前のように築いていきたい」と語り、ゴールを遥か先に見据えている様子だった伊東歌詞太郎は2020年、更なる飛躍を遂げるに違いない。そう予感させるツアーファイナルだった。
1.北極星
2.It's all right
3.つながって
4.惑星ループ
5.さよならだけが人生だ
6.365
7.約束のスターリーナイト
8.小さなころから
9.アストロ
10.ワールド・ランプシェード
11.からくりピエロ
12.ラピスラズリ
13.真夏のダイヤモンド
14.革命トライアングル
15.ムーンウォーカー
16.I Can Stop Fall in Love
17.magic music
18.帰ろうよ、マイホームタウン ~追想~
アンコール
1.パラボラ ~ガリレオの夢~
2.僕だけのロックスター
ネット音楽のカバー、動画投稿で活動を開始し2012年に初CDをリリース。“希代の歌い手”としてその力強い歌声で現在の動画総再生数は8000万回超を記録、SNSフォロワーは計100万人以上と、若い世代&ネットユーザーに絶大なる支持を集めるシンガーソングライター。メジャーデビュー以降、3作連続でアルバムTOP10入りを継続中。またその歌唱力を生かしたライブの人気も高く2018年の全国フリーライブでは約2万人を動員。また初の書下ろし小説「家庭教室」が6万部を突破するなどマルチ・クリエイターとしての側面も持つ。メディアには顔出ししておらず、狐のお面がトレードマーク。
取材・文●大前多恵
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