映画アドバイザーのミヤザキタケルが、各月の初放送作品の中から見逃してほしくないオススメの3作品をピックアップしてご紹介! これを読めばあなたのWOWOWライフがより一層充実したものになること間違いなし!のはず...。
今月は、家族の愛やつながりを感じさせてくれる3本を紹介します。
地方のローカル線を舞台にした“RAILWAYS”シリーズ第3弾。夫の突然の死をキッカケに、連れ子とともに夫の故郷を訪れ、鉄道の運転士を目指すことになる主人公の晶を有村架純、亡き夫の父で鉄道の運転士として働く節夫を國村隼が演じる。夫・父・息子、それぞれにとって愛する人を亡くした家族の姿を通し、形だけの家族が本当の家族へと変化していく様をつづる。
劇中で語られるように、線路はどこまでも続かない。人生もそう、始まりがあって終わりがある。誰もが終点へと向かうレールの上を走りながら生きている。幼い頃は親がレールを敷いてくれていた。整備が行き届いたレールなのか荒れたレールなのか、細かな差異はあれど、幸福な時間であったと思う。しかし、大人になれば自分でレールを敷く必要もあり、切符を買い、歩みを進めていかなければならない。途中で停車せざるを得ない事態に陥ることもあるだろう。別ルートを検索し乗り換えるか、ひたすら待つか、歩み方も向き合い方も人それぞれ。本作は、一度歩みを止めてしまった心の列車が再び走り出すまでの物語だ。
過去と今を比較しながら生きるのは非常に辛い。今がよっぽど充実しているなら別だが、過去の方が充実していたと思っているのであればどうしようもなく胸が締め付けられる。作中で並行して描かれる、夫が生きていた頃の回想シーンは、観る者にとってそのどれもが輝いて見えて仕方がない。でも、僕たちが生きているのは“今”。輝いたり魅力を放ったりしなければならないのは、今この瞬間。失ってしまった大事なものと同等のものなんて、一朝一夕では手に入れられない。だが、何かを失ったのなら、囚われ続けるか、他の何かで補おうとするのが人間というもの。ただ、それは空いた穴を埋めるための代用品であってはならない。必要なのは、今を肯定できること。より良き今を築いていこうとする強い意志。それを手にすることが何より困難なのだが、一度手に入れられたのなら、並大抵のことでは揺らがない。また、新しい何かを得たからといって、過去を捨て去る必要もない。手探りながらも道を模索していく晶たち。その努力や葛藤や愛情が色となり、無色であった形だけの家族に「かぞくいろ」という名の色が着色されていく。僕たちが生きるこの人生のあらゆる想い、心洗われる瞬間が詰まっています。
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