映画アドバイザーのミヤザキタケルが、各月の初放送作品の中から見逃してほしくないオススメの3作品をピックアップしてご紹介! これを読めばあなたのWOWOWライフがより一層充実したものになること間違いなし!のはず...。
今月は、伝記映画・小説が原作の人間ドラマ・アメコミ映画とタイプの異なる3本を紹介します。
ティム・バートン、ギレルモ・デル・トロらに絶大な影響を与えた小説「フランケンシュタイン」の著者メアリー・シェリーの半生を、エル・ファニング主演で映画化。10代にして後世に残る名作を生み出した女性の生き方を通し、夢と向き合うために必要なものを映し出した作品です。
誰もが知る「フランケンシュタイン」。だが、その著者の素顔を知る者はどれくらいいるだろう。僕は本作に出会うまで著者が女性であることすら認識していなかった。今とは異なる時代の英国の文化や価値観。
唯一認識できる“フランケンシュタインの怪物”という要素もなかなか顔を出さないため、序盤、物語に没入するための糸口を見出せずにいた。しかし、途中で気付くはず。現代にも通ずる女性蔑視などの問題がつづられていくのも確かだが、真に描かれていたのは、夢との向き合い方であることに。
時代・国・性別・家庭環境のせいか、メアリー(エル・ファニング)には夢をかなえたり現状を打破したりするための手立てが何もない。そんな状況下で救いの手を差し伸べられようものなら、どんな小さな光であっても、すがらずにはいられない。そうして彼女は詩人のパーシー(ダグラス・ブース)と駆け落ちする。
しかし、他力本願ではいざという時に何もできない。自ら発した光でない以上、そんな資格も有していない。本来、光を発せられるよう導き後押しするのが親の役目。けれど、生まれたと同時に母を亡くし、父は再婚相手に気を取られてばかり。それ故、メアリーは自ら光を発する術を見出せない。とは言え、自分の人生、誰のせいにもできやしない。
与えられなければ、自らつかみ取りにいくしかない。何度も間違え傷ついていく中で、光を発することを迫られるメアリー。それができなければ、他者の光に一生すがって生きていくしかない。頼れる者も、逃げ込む場所も失い、ドン底で彼女が絞り出した光。それこそが小説「フランケンシュタイン」であった。
たとえ他者の光より儚くとも、自ら発した光であれば、心持ち次第でいかようにも輝きは増していく。主導権は自らが握っているのだから。夢をかなえられずもがき続けている者にとって、彼女が抱える葛藤は決して他人事では済ませられない。自ら光を発することの難しさ、誰かに便乗しているうちはどうにもならないことなど、多くの事実をこの作品は突き付けてくれることだろう。
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