また、新居に侵入してきた強盗犯たちと戦うはめになった母娘のサバイバルを描くサスペンス『パニック・ルーム(2002)』(1月14日[火]夜11:20 WOWOWシネマほか)では、母が娘を起こそうとして顔に水をかける場面を45回撮り直し。娘役のクリステン・スチュワートは今でこそ人気女優だが、本作の撮影時はまだ11歳。子役にも高いレベルを求めるフィンチャーの姿勢は、まさに完璧主義者と呼ぶにふさわしい。
こうなると、演じる俳優も大変であることは想像に難くないが、それでも彼らはフィンチャーの才腕に信頼を寄せている。『ベンジャミン・バトン 数奇な人生(2008)』(1月15日[水]深夜1:00 WOWOWシネマほか)で主演を務めたブラッド・ピットはこう語る。「デヴィッドには映像に対するすばらしい目があり、カメラワークのバランスは彼にとって、もうそれしかないというものだ。それがまた最高だから、その結果、見事に練り上げられた作品が完成する。彼は彫刻家なんだよ」。
当のフィンチャーは「撮影の98%は妥協だ」と口にするが、妥協のない残りの2%で、これだけの傑作を作り続けているのだから恐ろしい。鬼才の鬼才たるゆえんというべきか。いずれにしても、ますます目の離せない存在なのだ。
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