われわれはなぜ魅せられてしまうのか! 岩井俊二ワールドの映像磁力 <ザテレビジョンシネマ部>

2020/01/14 07:00 配信

映画

『Love Letter』(C)フジテレビジョン


来たる1月17日(金)より、岩井俊二監督の新作『ラストレター』が全国公開される。出身地の宮城県を初めて物語の舞台として選び、手紙の行き違いをキッカケに2つの世代の恋模様と、それぞれの心の再生と成長の物語が紡がれてゆく。キャスト陣には松たか子、豊川悦司、中山美穂らの名前が並び、さらに音楽担当は小林武史と聞けば、岩井監督のあれやこれやの過去作をすぐさま思い出すことだろう。

『Love Letter』(C)フジテレビジョン


『スワロウテイル』(C)1996 SWALLOWTAIL PRODUCTION COMMITTEE


【写真を見る】当時21歳!『四月物語』に出演した松たか子1998 Rockwell Eyes.All Rights Reserved.


さて、その傑作群の中から『Love Letter(1995)』(1月17日(金) よる9:00 WOWOWシネマほか)、『スワロウテイル(1996)』(1月17日[金]よる11:00 WOWOWシネマほか)、『四月物語(1998)』( 1月17日[金]よる7:45 WOWOWシネマほか)の3作品が今回放送される。なるほど、これらに当たってから『ラストレター』を観るのは実に“正しい行為”だ。両者の間には一貫して持続している、確かな作家的なエッセンスが認められるからである。

それを仮に「岩井俊二の映像磁力」と呼ぶが、われわれを深く魅了してやまぬ、あのトーンとルック、生/性の浮遊感に満ちた登場人物たちの捉え方や、ごく見慣れた何気ない風景でさえもが輝きを放つ描き方は、何物にも比しがたい。

いわば、「映像に魔法をかけてしまう」のが岩井監督のやり方であるのだが、そもそも類いまれなセンスの持ち主で、学生時代に小説家、20代前半には漫画家を目指していただけあって、完成度の高いネーム(作品の設計図)と絵コンテを用意することも“魔法”の要素のひとつ。

が、そこからヴィジョンを共有しつつ膨らませ、イメージを具現化させていく随伴者の力もまた大きかった。例えば篠田昇の存在。岩井監督とはMV(ミュージック・ビデオ)時代からコラボレーションを始め、TVドラマ『世にも奇妙な物語 冬の特別編』の一篇「ルナティック・ラヴ」(1994)を皮切りに映画『花とアリス』(2004)までほとんどの岩井作品の撮影を担当したのであった。