池松壮亮、蒼井優出演の「斬、」と「ブリグズビー・ベア」が映し出す、人の弱さともろさと可能性<ザテレビジョンシネマ部>

2020/01/17 07:00 配信

映画

『斬、』(C)SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER


映画アドバイザー・ミヤザキタケルがおすすめの映画を1本厳選して紹介すると同時に、併せて観るとさらに楽しめる「もう1本」を紹介するシネマ・マリアージュ。

第11回は、争い事から抜け出せない人間の心の弱さや傲慢さ、力で物事を解決しようとすることのリスクを描いた『斬、』(1月19日[日]よる9:00 WOWOWシネマほか)と、誘拐事件で生じた無数の理不尽や不和、力持たぬ者の無力さ、力だけでは真の問題解決に至らないことを教えてくれる『ブリグズビー・ベア』(1月25日[土]午前7:05 WOWOWライブほか)をマリアージュ。

『斬、』(2018)


『斬、』(C)SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER


第9回ローマ国際ファンタスティック映画祭グランプリを受賞した『鉄男』(1989)や、第二次世界大戦時において極限状態に追い込まれた兵士の姿を描いた『野火』(2015)など、日本のみならず海外でも圧倒的な人気を誇る塚本晋也監督初の時代劇作品。

主演を務めるのは、池松壮亮と蒼井優。人を斬ることに疑問を抱く浪人と周囲の人々の姿を通し、争いの輪廻にとらわれた人の心の在り方をつづる。

なぜ人は争い合うのか。なぜ恒久的な平和は訪れないのか。武器が存在するからいけないのか。それとも、人の心が弱いからいけないのか。

前作 『野火』からさらに時代をさかのぼり、手にする武器を銃から刀に変え、政治うんぬんの要素も極力削ぎ落とし、より根源的で、争いの呪縛から逃れられない人間の本質を本作はあらわにする。誰だってののしられたらののしり返したい。

殴られれば殴り返したい。その延長線上の果てには、命のやりとりや駆け引きだって発生する。どちらか一方が降参するか、相手側のすべてをふみにじり、報復の芽を根絶やしにしなければ、“やったやられた”の応酬は永久に終わらない。