父親不在のブドウ収穫や相続問題、個々に抱える事情など、数々の困難に直面する3兄妹。時にぶつかり、時に笑い、時に涙し、親を欠いた新たな家族の関係性を構築していく。
ワイン造りと並行して描かれていくのは、他者とのつながり、この先の未来と向き合うための心持ち。ひとりでは乗り越えられない数々の問題を前に、どうしたら力を合わせられるのかを模索する。
そういった過程にこそ、今を生きる僕たちの心を突き動かすものが宿っている。
電話の声と音だけを頼りに誘拐事件を解決するという設定が話題を呼び、世界中の映画祭で称賛され、ハリウッド・リメイクも決定している、グスタフ・モーラー監督によるデンマーク産サスペンス。
事件と対峙する緊急通報指令室のオペレーターのアスガー(ヤコブ・セーダーグレン)の姿を通し、一歩踏み出すために必要なものを映し出す。
電話相手の顔も居場所も映されず、指令室にいるアスガーと同僚たちの姿のみで話が展開していくワンシチュエーションもの。89分の上映時間はリアルタイムとして描かれ、観る者はその場に居合わせたような感覚に陥るはず。
また、電話から聞こえてくるありとあらゆる“音”が、あなたの脳内にさまざまな映像を浮かび上がらせることだろう。
誰もが自分の力を過信しがち。アスガーもそう。誘拐事件解決のためオペレーターという枠から徐々にハミ出していく。だが、冷静さを欠いていては、独り善がりでは、状況判断を見誤る。
彼が押し通そうとする正義は、独断専行であり、ただのエゴでもある。力を行使できるだけの資格を得た者だけが許されることを、資格を持たない彼がやってしまう。目の前の問題をクリアにしない内は前には進めない。
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