拙作「百円の恋」から6年。見ていただいた皆さまのおかげで、再びボクシング映画に挑む機会を与えていただいたことに感謝します。
ボクシングになぜ魅せられてしまうのか。1ラウンド3分、1時間にも満たない試合に魅了されてしまうのは、リング上に人生の縮図を垣間見せられる刹那があるからだと考える。憎くもない相手と殴り合う因果のボクサーたちにとって、リングという領域は勝敗を超えた何かをつかみ取れる場所だと考える。
この非情の世界には、“かませ犬”と呼ばれるボクサーたちが存在する。対戦相手からも観客からも、敗北を期待されているボクサーだ。初めから負けるつもりでリングに上がるボクサーは、1人としていないはずだ。人生も同じだ。
そんな“かませ犬”と揶揄される、ロートルボクサーが本作の主人公だ。5時間に渡るシナリオを、足立紳さんが1人で書き上げてくれた。必然的にこの素晴らしいシナリオに、素晴らしいスタッフ、キャスト、才能達が集結してくれた。
主人公のロートルボクサー役の森山未來さんを筆頭に、ボクサー役の北村匠海さん、勝地涼さんの献身的なトレーニング姿は、我々スタッフの力となり、作品の推進力となっている。彼ら3人のボクサーを取り巻く人間模様を描くべく、素晴らしいキャストたちが集結してくれた。
タイトル「アンダードッグ」が“負け犬”という意味ではなく、人間の持つ底力、人間力の可能性を知らしめるタイトルへと変貌する作品に仕上げることが、自分の本懐であり、使命だと考えている。
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