――主人公のユマとトシの関係は後半にかけて濃密になっていきますが、前半部分ではトシがどういう人物なのか謎に包まれているような気がしました。
それはなぜかというと、本編では僕のシーンが2/3ぐらいカットされているから(笑)。本当はもっとたくさん撮っているんです。これは僕に限らず、ユマを取り囲む人たちのシーンはほぼほぼカットされているんですよ。他のエピソードをバッサリ切って、ユマの成長物語にしているんですよね。
正直、試写で初号を見た時にびっくりしました。「あれ、こういう映画やったっけ?」って。でも、エンドロールが流れる頃には誰よりも大きく拍手をしていたと思います。とても素晴らしい作品やなって感じました。
もし、他の座組で同じものを作っていたら、いろんなところからクレームが出ていたかもしれません。思っていたものと違うじゃないか!って。
だけど、HIKARIさんを中心に、スタッフとキャストがみんな同じ考えを持って作品と向き合っていたからこそ、こんなすてきな映画が完成したんだなと。みんなの想像をはるかに超えているんです。すごく感動的な初号試写でした。
――多くを描いていないからこそ、登場人物たちの言動を通して見る側がいろいろ想像できるのかもしれませんね。
結局、僕らも通りすがりの人たちの人生を知らないじゃないですか。別に共有しているわけではないから。そういう意味でも、ユマと彼女を取り巻く人々の関係性にリアリティーがあるような気がしました。
自分の心の傷は簡単に他人に見せられるものではないから、それぞれが何を背負っているのかなんて誰にも分からない。そういうことを考えさせられるようなしっかりと“人間”を描いた作品になっていると思います。
――物語の後半では、ユマとトシがタイへ。その時のトシの心情は?
僕のシーンがかなりカットされているという話をしましたけど、劇中で描かれていないトシの背景として一つ言えるのは、過去に大きな心の傷を負っているということ。
その責任は自分にあると思っていて、その罪悪感から前に進めずにいる状況だったんです。でも、何とか一歩進むために自分が生きている意味を探そうとしていたトシは誰かのためになりたい、力になりたいと思うんです。
きっと、人を救うことによって、自分自身も救われるかもしれないという思いがあったのかもしれません。
その時に、障害者を中心にサービスを行うデリヘル嬢の舞(渡辺真起子)と知り合い、彼女の仕事を手伝う中でユマと出会ったんです。
――ユマの存在がトシを変えっていったわけですね。
最初はユマの力になろうとしていたはずが、成長していく彼女の姿を間近で見ているうちにいつの間にか自分自身が背中を押されていることにトシは気付くんですよね。ユマの存在はかなり大きかったと思います。
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