みうらじゅんといとうせいこうが各地の仏像を巡るシリーズ「TV見仏記」が10周年を記念し、5月27日(金)、DVD「新TV見仏記(3)京都編」「新TV見仏記(4)奈良・斑鳩(いかるが)編」を同時発売する。
同作は、仏像好きとして知られるみうらといとうが、独自の観点で仏像を紹介しながら、絶妙な掛け合いを見せるTVシリーズ。書籍から始まった2人の珍道中(?)は、'01年に「TV見仏記」(関西テレビ)として番組化。一昨年「新TV見仏記」としてリニューアルを経て、ことし10周年を迎えた。同作が発売されるに当たり、いまなお仏像への愛情が衰えない2人に話を聞いた。
――TV見仏記10周年を迎えての感想をお聞かせください
みうらじゅん(以下、みうら)「『よく続いているな』って感じですね。それはスタッフのおかげなんでしょうけど。普通相当な仏教用語を使ったとき、(画面の)下に注釈のテロップ出るのに、この番組は出てないんですよね」
いとうせいこう(以下、いとう)「自分たちでも、(見仏記を連載している)雑誌『本と旅人』(角川書店)で行っている時と比べてマニアック濃度を低くしてないんです。ある程度、分かりやすくはしていますけど、相当なこと言っていると思うんです」
みうら「あと、画面の下に字が出て、笑いどころをわざと字にすることもないね」
いとう「そういう意味では無骨なディレクターなんですよね」
――プライベートでもお2人で見仏に出掛けているそうですが、TV番組として意識している点はなんですか?
みうら「きょうみたいな取材ではメークするけど、本番はしてないんです(笑)」
いとう「風で髪の毛がめちゃくちゃになってたりするからね」
みうら「でもご住職はたぶんメークしてきてると思う」
いとう「メークの話はいいんだよ(笑)。…でも前、まゆを書いてる住職いたもんね」
みうら「お寺に行ったら『ちょっと待ってください』って言われて、結構待ったよね? その後、トノサマバッタみたいなまゆ毛で現れて。でもご住職にとっては、テレビ映るって一世一代だからね。檀家さんも見てるし」
いとう「(お寺を訪ねて)最初の1分くらい、ご住職とのトークはわれわれのトークの振り幅をよく見せてるシーンなんですよ。2人の間にほかの大人が入ってきた場合、どう対応して、なおかつ自分たちの言いたいことも言えるかっていう」
みうら「ご住職の信用をつかむために、ちゃんと勉強して行ってるんだもん。気持ちよく(収蔵庫を)開けてもらいたいもんね」
――かなりの数のお寺を回っていますが、信仰心が芽生えたりしましたか?
みうら「自分たちもボロになりますし、やっぱり『死』のことも考えます。『死』を考えないときは、信仰心って必要なかったんですよね」
いとう「このごろ、みうらさんがご住職の話をよく聞きだすよね」
みうら「聞きだしすぎて、この間、ご住職のオーディオルームを紹介された。フォークバンドを組んでたって聞いたり(笑)」
いとう「見仏の中で、そうした人間と人間の関係も考えるし、人間と物(仏像)との関係も考えるし、時代と物との関係も考えるから、いろんなこと考えられるんじゃないですか。仏像は、何百年も前からあるものだから、『病気治してください』ってお願いしたかもしれないし、死んだ人のことを祈ったかもしれない。その仏像の前に自分たちがいるっていうことの時代性を感じますよね」
――今回のDVDの見どころはどこですか?
みうら「今回は、神仏習合している謎の仏像を随分見てる。大きい寺じゃないと巻物とかが残ってないから、ゆえんがミステリーなんだよね」
いとう「あと、秘仏の龍神を撮ったりしちゃってる(笑)。それから本尊以外のところも楽しいんだよね。木魚を買ったりとか」
みうら「ああいうグッズを見るとものすごくエキサイティングする。その後、数珠を買ったし、あとは袈裟(けさ)だよね」
いとう「怒られるって(笑)。あと、僕らの取っておきのファッションを身に着けているから、その変化も見どころ」
みうら「もう10年もやってるから、同じコートじゃいけない。普通コートなんて、2~3年使い回しなのに、この番組のためだけに買ってるもん。このDVDの時は、クマみたいなコート買ったんだよ。『テレビ向きだ』って思って。でも普段着れやしない(笑)。仏像は修復してるけど、人間の修復はないからね」
いとう「実は同じことをのんびりやっているように見えて、細部に気を使っているのでそこも面白いですよ」
みうら「それから、(DVDパック特典の)このTシャツを着て、奈良とか行ってる人がいたら面白いね。見仏ファッション。…俺ら着て行ってないけど」
――昨今、パワースポットがブームになっていますが、見仏にも変化がありましたか?
みうら「仏像の展覧会に若い人たちは増えたね」
いとう「それは、みうらさんが阿修羅ファンクラブの会長を務めた『国宝 阿修羅展』(東京国立博物館 会期終了)の功績でしょう。東京国立博物館にあれだけの人が入ること自体が異常だったから。まして仏像で」
みうら「動かないのにね」
――それは「見仏記」の功績では?
いとう「でも『阿修羅展』の時、博物館のショップに『見仏記』売ってた?」
みうら「…売ってなかった(笑)。僕は何も、阿修羅ファンクラブ会長とかいばってるわけじゃないけど、置いといてほしいよね。避けるように置いてなかった」
いとう「やっぱり異端に思われがちなところがあるんだよね。でも確実に、『阿修羅展』以降、潮目が変わった」
みうら「船乗りかよ(笑)。でも流れは変わったね」
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