2020/03/04 07:00 配信
―― 一方、渡辺さんが演じられた吉田所長は、お名前も役職もそのままで登場します。
渡辺 先ほどもお話させていただいたように、この映画のキャラクターはフィクションの作りになっています。ですが、吉田所長だけではご遺族の了承をいただいて、そのままのお名前で演じさせていただきました。
――そこにはプレッシャーもあったのでは?
渡辺 吉田さんはご自身でメディアにも出られていた方なので、少なからず吉田さんのことをご存知の方もいらっしゃるでしょうし、そういう意味でのプレッシャーはありました。なので、この映画の原作はもちろん、吉田さんについて書かれている本も読み漁りました。でも、その中で一番参考にさせていただいたのは、実際に事故現場で吉田さんの下につかれていた方々のお話でした。
――その中で一番印象に残ったお話を教えてください。
渡辺 あのときの吉田さんはどうだったんですか、どんな表情だったんですか、と撮影そっちのけで聞き倒しました。その中でも印象に残ったのは、吉田さんが現場で何回「バカヤロー!」と言っていたのかを、スタッフが“正”の字で数えていたということ。それは現場にいた方にしか分からないことなので、ものすごく参考になりました。
――お二人が演じられた伊崎と吉田所長の人間性について、どう捉えられていましたか?
佐藤 普通ですよね。伊崎の父親も原発に勤めていて、彼にとって原発は幼い頃からそこにあって当たり前のもの。だから、何の違和感もなく自然とそこで働くようになり、そこでの収入で家族を養っている。
渡辺 そう、何も特別なことじゃないんだよね。
佐藤 でも、それが突然、自分の反目に回ってきたときに、どうすればいいのかという話で。しかも、自分たちのいる福島第一原発の外で何が起こっているのかどころか、自分たちが守ってきた建屋内の状況もわからない。これまでに学んできたマニュアルが通用しない中での恐怖感は相当なものだったと思います。だから、伊崎は事故に立ち向かったヒーローでも何でもなく、そのときその場にいたごく普通の人間。伊崎というキャラクター対しては、そう答えるしかないですね。
――渡辺さんはいかがですか?
渡辺 吉田所長は、関西出身でユーモアがあり、つねにオープンマインドな方だったそうです。地元の方々の協力なくしては原子力発電所は成立しないと思われていて、だからこそ地元出身者の多い作業員たちからもリーダーとして慕われていたのかなと思います。
佐藤 二人はルックス的にも似ているよね?
渡辺 僕はわりと実在の人物を演じさせていただくことが多いのですが、僕が身長184㎝で、大概の方は僕よりも小さいんですよね。でも、吉田所長は僕とほぼ変わらなくて大きい方だったので、そこだけはホッとしました(笑)。でも、ヘンな言い方ですけど、目線が合うとものの考え方が似てくるので、そういう意味では吉田所長が見ていたものに少しは近づけるのではないかと思っていました。
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