犯した過ちを容認してくれる者たちの甘いささやきに身を委ね、悔やみもせず、反省もせず、自分自身と向き合わぬまま楽な道を突き進んでいくハイドリヒ。
そんな彼と相反するかのごとく、国のため、大義のため、より良き未来のため、その身を投げ打ってでも平和をつかみ取ろうと険しい道を突き進んでいくヤンとヨゼフ。時代が時代であったのなら、僕たちは一体どんな道をたどっていたことだろう。
今の日本は戦時中ではないため現実感を抱けないかもしれないが、人間の心のメカニズムは大して変わらない。いつだって過ちを犯しかねないし、必ずしも正しい道を歩めるとは限らない。
つまりは、選択次第で良くも悪くも同じことをしてしまう可能性を秘めている。ナチスを悪と見なすだけでは、何の解決にも至らない。
多くの過ちを糧や戒めとすることで一定の平穏を保てている現代ではあるが、争いの火種は今この瞬間にも無数にくすぶり続けている。
再び大きな戦争を繰り返すわけにはいかない僕たちは、対話による問題解決を、相互理解の術を確立していかねばならない。が、身近な人とさえ分かり合えなくなってしまうのに、果たしてそんなことなどできるのだろうか。僕たちの世代では無理かもしれない。
けれど、この先の未来を生きる者たちがいつの日か果たしてくれると信じたい。だからこそ、手探りであろうとやれることをやるしかない。先人から託されたバトンを後世へとつないでいく役目が僕たちにはある。
より良き未来を築いていくために必要なものを、先の世代へと継承していかなければならないバトンが何たるかを、本作は示してくれる。
『ローン・サバイバー』(2013)、『バーニング・オーシャン』(2016)、『パトリオット・デイ』(2016)に続く、マーク・ウォールバーグ×ピーター・バーグ監督の4度目のタッグによるアクション・サスペンス。
東南アジアを舞台に、ウォールバーグ演じるCIA極秘部隊のジェームズ・シルバたちが、危険な放射性物質の行方を知る重要参考人を亡命させるべく、米大使館から22マイル(約35.4Km)離れた空港までの危険な道程を護送していく。そんな彼らの姿を通し、終わることのない争いのメカニズムを映し出す。
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