――是枝監督が撮った2本についてですが、「ただいまの後に」(第1話)は実家に帰省した有村さんと母親が繰り広げる母娘のドラマですね。
有村「これは今回の8本の中でも、いちばん自分の素に近い部分が出ていると思います。母との関係性とか、私も実際にこんな感じだと思いますね。久しぶりに会ったらお互いにいろいろ状況が変わったりしていて、母と娘がお互いに近況を探り合う感じもとてもリアルだなと思いました」
是枝「娘にとって『母親が自分とは違う生き物に見える瞬間』って必ずあって、それに伴って関係性も自然と変化していくと思うんです。娘のちょっとしたイラつきとか、それが自分に向けられた時の母の戸惑いだったりとか、とても繊細な関係の中に芽生える感情をきちんと捉えたいなと思いながら撮っていました」
――とくに印象深いシーンなどはありますか?
是枝「母と喧嘩したときに、有村さんが母親の背中を見ながら文句を言ってフレームから出ていくシーンがあるんですが、その最後に『ふふっ』って鼻で笑うんですよ。」
有村「ふふふっ」
是枝「最後の『ふ』の時にはフレームから外れているくらい絶妙で、まるでそれを計算して動いているような気がして、その感じが面白かったですね」
――一方の「人間ドック」は、エコー室で元カレと二人っきりという、これまた絶妙な距離感が描かれます。こちらはどんな有村さんを撮りたいと思いましたか?
是枝「艶かしくて小悪魔な感じかな。元カレと再会したことで、患者から女になる瞬間がちゃんと表現できていると思います。総じて有村さんのお芝居って、先ほどの声も含めてどこかに陰があって、すべてに照明が当たっていない雰囲気があるんですよね」
有村「根暗な部分が出ちゃった(笑)」
是枝「でもそこが魅力的なんですよね。基本的には非常に端正なお芝居をされる方ですが、でも不思議と優等生ではない。だからお客さんも想像を掻き立てられて、『ん?』って身を乗り出すのかなと。あれはなんでしょうかね?」
有村「ふふ、なんでしょうね(笑)」
有村架純ソロインタビューの後編へ続く。
取材・文:岡本大介
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