今、立ち向かわないといけない問題はさまざまです。新型コロナウイルスへの対応だけでなく、多くの問題の中で僕たちは生きている。今回は中山七里さんの原作を得て、貧困問題や格差社会について考えながら映画を作っていくこととなりました。
そこには一緒の仕事は2度目となる佐藤健さんがいます。しなやかな感性と身体で、新しい場所へと映画を運んでくれると信じています。清原果耶さんは世界に立ち向かうヒロインとして、今を生きる我々の代弁者として、気持ちと覚悟をさらけ出してくれると思います。
10年ぶりにご一緒する阿部寛さんとは、本当に現場でお会いするのが楽しみです。いまだゴールは見えていませんが、キャスト、スタッフ共にこの大変な状況の中で、映画を作る意味を考えながら粛々と突き詰めていきたいと思っています。それが僕らの仕事であり、生きていくことだと思っています。
以前、某映画監督と話をしていた時、こんなことを聞いた。「実はエキセントリックな役というのは、演じるのが割と簡単なんです。本当に難しいのは、普通の人を演じることでしてね」。
当初、出版社からのオーダーは「仙台を舞台にした物語を書け」という内容だった。仙台という場所からテーマはすぐに決まったが、難航したのはキャラクター設定だった。
僕の小説には、天才ピアニストやドーベルマンのような刑事や悪徳弁護士など、特異な人物が登場することが多いが、この物語は市井の人々の絶望と喜びを描く必要があった。従って、登場するキャラクターは全員普通の人であり、普通の生活をし、普通に泣き、普通に憤る。
今回、「護られなかった者たちへ」映画化に際して、佐藤健さんや阿部寛さんといった演技派・実力派と称される方々がずらりそろい踏みしたと聞き、原作者として幸せを噛み締めているところである。
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