映画アドバイザーのミヤザキタケルが、各月の初放送作品の中から見逃してほしくないオススメの3作品をピックアップしてご紹介! これを読めばあなたのWOWOWライフがより一層充実したものになること間違いなし!のはず...。
今月は、日本とシンガポールの外交関係樹立記念作品、誘拐事件に着想を得た物語、異文化恋愛物語と、現実の要素が絡んだ3本を紹介します。
斎藤工主演、シンガポールの巨匠エリック・クー監督による、シンガポールと日本の外交関係樹立50周年記念作品。自身のルーツを探るべく、今は亡き日本人の父とシンガポール人の母が出会ったシンガポールへと旅立つ青年、真人(斎藤)の姿を軸に、家族や料理、戦争の観点から、他者とのつながりや相互理解の重要性を描いていく人間ドラマ。
文化・宗教・歴史・国籍・言語など、国や人を隔てる要素は無数に存在するが、料理を食べて「美味しい」と感じる心は万国共通。産地が異なる食材同士であっても調理の仕方や創意工夫で美味しい料理となる。
もしそれと同じことが人間同士の間でも起きたのなら、どんなに素晴らしいことだろう。生まれも育ちも価値観も異なる人間たちが理解し合い手を取り合うことでひとつとなり、素晴らしい未来を創造していける可能性だってゼロではない。
ただ、実現していくまでには幾多の困難が付きまとうことを、あなたは真人が直面する厳しい現実を通して垣間見る。
何かを理解するとは、対象の良い部分も悪い部分もしっかりと見極められるということ。どちらか片方にのみ目を向けているうちは、真に対象を理解したとは言い難い。
それは上質な料理をつくる上でも、人と人との関係性においても、より良き未来を築いていく上でも言えること。食材の良さを最大限に活かす方法と、最大限におとしめてしまう方法、そのどちらも把握できているからこそつくれる料理がある。
人間関係においても、相手の長所も短所も把握できているからこそ、それぞれの特性に合った役割を与えたり補い合ったりすることもできる。輝かしい人類の歴史もあればおぞましい歴史もあり、どちらも真摯に受け止めてこそ切り拓いていける未来がある。
バラバラになった家族の物語である本作で描き出される、国籍の異なる両親それぞれのソウル・フードと、未だ癒えぬ戦争の傷痕を通し、誰にとっても必要な「愛」と「食」と「より良き未来を求める心」を見事に示した作品です。美味しいラーメンのように、たくさんのものが詰まっています。
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