1993年にイタリアのシチリア島で実際に起きた少年の誘拐事件に着想を得た物語。13歳の少女ルナ(ユリア・イェドリコフスカ)が、想いを寄せる同級生のジュゼッペ(ガエターノ・フェルナンデス)の突然の失踪に疑問を抱き、行方を捜すのだが...。思いを果たすことが許されず追い込まれていく少年少女の姿を映し出す。
誰もが通る子ども時代。10代の多感な時期を乗り越えて僕たちは皆大人になった。無数の壁を前につまずき、純粋であった部分は次第に汚れ、良くも悪くも賢くなり、効率的な道を好むようになっていく。
理屈抜きで考えること、後先考えず目の前のことに全力投球できたのは過去のこと。そう、本作が描くのは少女が大人になっていく過程であり、少年が大人になることを許されなかった結果なのだ。
物語の難解さを解き明かそうとすればする程に、タイトルが意味するものが見えてくる。(実話ベースであるためネタバレと受け取ってほしくないのだが、)779日にも及ぶ監禁生活の果てに少年が絞殺され、死体は酸で溶かされたという実際に起きた凄惨な事件。その被害者である少年の心を、大人になることを許されなかった彼への弔いを、本作は映画という独自のツールを用いることで果たそうとしていたのではないだろうか。
あなたが目にすることになるのは、おそらくひとつの可能性。今この瞬間もこの世に留まり続けているかもしれないジュゼッペの魂に、ルナというフィクションの存在を通して数々の慰めを、映画の中だけでも魂の救済を与えようとしていた気がしてならない。見る人の心持ち次第で、如何様にも受け止め方が変わってくる作品です。
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