浅沼は本職が脚本家、演出家であるという異色の声優だ。そんな彼に「啄木鳥探偵處」に脚本を提供するとしたら、どんな物語を書きたいか尋ねてみると、「啄木も京助も登場しない、野村胡堂や吉井勇、萩原朔太郎たちが活躍するお話を書くと思います。僕はスパイ映画でいうと『007』シリーズよりも『ミッション:インポッシブル』のような、徒党を組んで、それぞれが得意分野で活躍するという話が大好きなので、彼らをもっと掘り下げたくなるんじゃないかなって思います」と、微笑んだ。
演出家、脚本家というクリエイターとして、俳優や声優というパフォーマーとして。両方の視点を持つ浅沼は、本作に寄せる思いをこう語ってくれた。
「いつの時代に作られたどんな作品でも、そこに込められた思いが受け手の皆さんに届くかどうかは、正直わからないんですよね。『啄木鳥探偵處』に登場する文士たちもそれで悩んでいたかもしれません。それは、演じ手も含む作り手側が必ずぶち当たる、普遍的な壁なのかなと思います。
でも、その壁を恐れずに作品を生み出しているスタッフさんたちの情熱を、視聴者の皆さんに少しでも届けられたらいいなと思っています。総監督の江崎慎平さんや牧野友映監督をはじめとするスタッフ陣や、作品のモデルとなっている歌人や文士たちの思いが、僕ら演じ手を通して届けられたらこれほど幸せなことはないな、と常々思うので、もし、このアニメを観てこの時代に生きていた人々に興味を持っていただけたら、ぜひ原作小説や登場人物たちが実際に残した作品などに触れてみていただきたいと思います」
取材・文=中村実香
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