極東大満天は、雨の日も、風の日も、その優しくも儚い眼差しで夢ある若者を見守ってきた。そんな極東大満天を長年守ってきた人物がいる。たった一人で本像の管理・清掃を担う野村光一さんだ。
野村「最初は隅々まで清掃するのが大変でしたね。極東さんの足を洗う月、頭を洗う月、腹回りを磨く月…という具合に月ごとに洗う箇所を分けて進めていくと、全身を洗い終えるまでに最低でも半年はかかります。私は、それでも特別な機械は使いません。全てデッキブラシ一本でやってきました」
──ビル8階分に相当する高所での仕事。たった一人での地道な業務。なぜ、長年続けることができたのか。
野村「私は20歳から50年間、清掃を続けています。いつも極東さんを清掃をしていると、私の心も洗われるような気持ちになるんです。洗い終わると、極東さんから『いつもありがとう』と気持ちが聞こえてくるんです」
──長年清掃・管理に携わってきたことで、大満天像と会話ができるようになったというから驚きである。
野村「清掃時には、私の方から『天気がいいですね』とか『かゆいところはないですか』と聞くようにしています。そうすると、『頭を洗ってくれ』だとか『背中がかゆい』とか、そういう声が聞こえてくるのです。もちろん、はっきりと言葉が聞こえるわけではございません(笑)。なんていうんでしょうか、風の音や金属音のような音など、言葉では表しにくいのですが、簡単に言うと、いろんな音に乗って言葉のようなものが届く感覚です。ひゅーひゅー、キーンキーン、カッカッカッ、あとは、クルルルル、クルルルルというような音ですね」
──実は、野村氏は今春で定年を迎えるという。
野村「来月からは当面アルバイトの方が入れ替わり立ち替わりで清掃するそうです。いやあ、心配ですね。おそらく慣れるまでぎこちない清掃になると思うので、初めは極東さんも私を呼び戻したいっていうお気持ちになられるかもしれませんね。もしかしたら、『おーい、野村。戻ってきてくれよ。カッカッカッ』なんて声が聞こえてくるかもしれません(笑)」
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