「逃げ恥」愛されたワケ “多様性”優しく受け止めた“穏やかで革新的”な物語

2020/05/19 07:00 配信

ドラマ コラム

※「逃げるは恥だが役に立つ」公式Instagram(nigehaji_tbs)より


平匡の同僚・日野秀司(藤井隆)は妻子を大事にしている状況をてらいなく語る、最も一般的な設定の登場人物であるが、ドラマでは、みくり、平匡、百合、涼太、沼田、日野をフラットに描いている。

日野という平均値と思われそうなライフスタイルと比較して、違っていることをことさらクローズアップしない。みんな穏やかに会話し、食をともにする。

恋にオクテな平匡をリードするみくりという男女のあり方の先入観を逆転させたり、平匡よりみくりがほんの少し背が高く見えたりするところもなんか良いのである。

もちろん連続ドラマなので、みくりと平匡、百合と風見の関係が揺れ動いていくのだが、彼らの悩みをエンタメ化することがない。

かつてのドラマは、病気や貧困や外見や様々な体験のあるなしなどをエンタメのテーマに据えてきたが、それとは一線を画す作品が「逃げ恥」だった。

ライフスタイルも、年齢差も、性差も、その差がドラマティックなのではなく、ドラマはその先の、人と人との出会いにある。

いろんな人たちが、星野源の「恋」で「恋ダンス」を楽しく踊って、幸福を増幅させていく。そんな優しく穏やかなドラマが成立したのは、新垣結衣星野源、石田ゆり子たちの圧倒的な清潔感も大きかったと思う。

新しい社会を一足早く予言した海野つなみの原作漫画は、ドラマの本放送と同時期に最終回を迎えたが、その後、百合と風見との恋の顛末を描いた番外編や、みくりと平匡のその後を描いた続編も描かれ、それもまたドラマ化してほしいと多くのファンが待ち望んでいる。今回の特別編が続編のステップボードになるか。(文・木俣冬)

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