“50席の客席”だけがあるというコンセプトの企画「なにもない劇場」を、個人ユニット「TAAC」が下北沢・駅前劇場で、6月24日(水)~30日(火)昼1:00-夜9:45に実施することが分かった。
個人ユニット「TAAC」(読み:たーく)は、タカイアキフミが主宰・作・演出をつとめる。「妥協なく創造・共創する集団」として2018年に大阪で立ち上げ、同年4月に第1弾公演「正義姦」では関西小劇場としては異例の2週間のロングラン、9月に第2弾公演「を待ちながら。」では七味まゆ味(柿喰う客/七味の一味)と山崎彬(悪い芝居)の二人芝居を東京・大阪2都市で上演、2019年12月には、三上市朗が主演を務める舞台「だから、せめてもの、愛。」を下北沢・「劇」小劇場で上演した。
そんなユニットが、新型コロナウイルス感染防止のため6月公演「世界が消えないように」の延期を5月14日に発表。今回の試みについて主宰のタカイは「劇場の価値を見つめ直すきっかけとなり、演劇復活のきっかけとなるようなムーブメントになればと願っております」とコメント。
「TAAC」が発表した企画意図は次のように発表した。
『役者はいない。
台本もない。
美術も、音響も、照明もない。
開演時間も終演時間も決まっていない。
あるのは50席の客席だけ。
ここは、なにもない劇場。
あなたのための場所。』
現在、さまざまな劇団がリモート配信などでの芝居など新たな形を模索している中で、「やっぱり劇場だ」「劇場でなにかやりたい」という思いが強くなったタカイは、さらに新たな動きの1つとして、誰もやっていない本企画を提示したいという。
「劇場を、演劇を愛する人たちが集い、これまでとこれからを考える。感じる」という言葉からは、現状を受け入れ今後の演劇界と新たな道のりに葛藤しながらも、舞台と客席で直接交わされる役者と観客の熱いやり取りを愛する、演劇人の思いが伝わってくる。
6月公演「世界が消えないように」で予定されていた開演時間と終演時間に1分間の暗転を実施する。暗転の実施時間は以下の通り。
・6月24日(水) 19:30、21:30
・6月25日(木) 19:30、21:30
・6月26日(金) 14:30、16:30
・6月27日(土) 14:30、16:30、19:30、21:30
・6月28日(日) 14:30、16:30
・6月29日(月) 19:30、21:30
・6月30日(火) 14:30、16:30
また、劇場への思い出や思いを、「#なにもない劇場」「#なにもない駅前劇場」というハッシュタグをつけてSNSで投稿してほしいと呼びかける。タカイは「みんなのこれまでの劇場の思い出やこれからの劇場への思いで劇場空間を埋め尽くしてほしい。そして、それを可視化したい。劇場に来た人も、劇場に来れない人も、劇場がつないでくれるような企画にしたいと思っています」と意気込む。
劇場には、本当に何もなく、あるのは“劇場と客席”のみ。どんな空間になるのか。
5月14日。TAAC「世界が消えないように」の延期を発表した。
あれから、僕にできることはあるのだろうかとずっと考えていた。
演劇人をはじめ様々な表現者たちが今できることを精一杯やっている。
はたして今、僕にできることはあるのだろうか。しばらく自問する中で、
「やっぱり劇場だ。」「劇場でなにかやりたい。」という思いが強くなった。
では、今の状況において劇場で何をするのか。何ができるのか。
僕は『なにもしない』という結論に至った。
劇場には、役者がいる。美術や音響、照明がある。そして、お客様がいる。
そんな当たり前が、今は当たり前ではなくなった。
だからこそ、今、「劇場」を考えるいい機会なのではないかと思う。
役者もいない、台本もない、美術、音響、照明もない、なにもない劇場で、
劇場を、演劇を愛する人たちが集い、これまでとこれからを考える。感じる。
たぶん、この企画は僕じゃなくてもできる。
でも、誰もやってないのだからやってやろう。そう決めた。
別に大層なことをしたいわけではない。
ただ、劇場を開けるだけだ。ただただ、僕が劇場に行きたい。それだけだ。
劇場が恋しい人たちも巻き込んで、
老若男女、役者、スタッフ、お客様、いろんな人が集う場所になれば嬉しい。
さあ。劇場に行こう。
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