「世界にひとつのプレイブック」と「劇場版 FFXIV 光のお父さん」が映し出す、人との距離間と絆<ザテレビジョンシネマ部>

2020/06/19 07:10 配信

映画

『劇場版 ファイナルファンタジーXIV光のお父さん(2019)』


劇場版 ファイナルファンタジーXIV光のお父さん』(6月19日(金)夜9:00、WOWOWシネマほか)は、累計アクセス数1,000万を超える大人気ブログを映画化した実話ベースの物語。広告代理店で働くアキオ(坂口健太郎)は、仕事一筋だった父、暁(吉田鋼太郎)が突然仕事を辞めたことで、自分が父のことを何も知らずにいたことに気付く。父と遊んだ唯一の記憶であるゲーム「ファイナルファンタジーⅢ」のことを思い出し、退職祝いの名目でオンラインゲーム「ファイナルファンタジーXIV」をプレゼント。正体を隠して父とともにプレイすることに。冒険の中で次第に心を通わせていく父子の姿を通し、誰もが直面するであろう家族の不和と絆の再生を映し出す。

『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』 (C)2019「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」製作委員会 (C)マイディー/スクウェア・エニックス


オンラインゲームという題材故に敬遠してしまう人がいるかもしれないが、あくまでも家族の関係性を描いた人間ドラマであるため、ゲームを知らなくても問題なく入り込める。そして、親子間で起きている擦れ違いのメカニズムは、『世界にひとつのプレイブック』で目の当たりにするそれと変わらない。むしろ、主人公が関わりたいと切に願う対象が身近にいる父親とハッキリしており、本作の方がいくらか自分の事に置き換えて考えやすいと思う。強いて言うなら、本作は応用編であり活用編。『世界にひとつのプレイブック』で目にした多くを実人生に還元するためのヒントをより実践的に感じ取ることができるはず。

【写真を見る】「劇場版 FFXIV 光のお父さん」で、坂口健太郎が優しい息子役を熱演(C)2019「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」製作委員会 (C)マイディー/スクウェア・エニックス


オンラインゲームの中では、容姿も年齢も性別も職業も収入も伴侶の有無も関係ない。日常において生じる面倒な駆け引きがないため、素直な自分でいられるのだ。世の中分かり合えないことや手を取り合えないことの方が多いが、ゲーム内ではクエストクリアやボスを倒すなどの共通の目的があるため、同じ志のもと、ともに前を向いていられる。関係性は対等で素直に他者の言葉を聞き入れやすい。相手を知ることで己を知り、歩み寄る勇気だって湧いてくる。そんなオンラインゲームの在り方が、日常ではまともに言葉も交わさないアキオと暁の関係性を変えていく。

『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』(C)2019「劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん」製作委員会 (C)マイディー/スクウェア・エニックス


身近な人だから、面と向かって会話するのが恥ずかしいこともある。でも、伝え方は一つじゃない。何かを介すことでいともたやすく通じ合える瞬間も時にはある。劇中の彼らにおいては、素性の分からない者たちによるオンラインゲームの世界であったからこそ、その気持ちを通わせることができた。あなたと大切な人との関係性に当てはめて考えてみた時、オンラインゲームに匹敵するだけの何かがきっとある。本作を目にしたのなら“それ”が何であるのかを追い求めずにはいられない。

自分ひとりでは得られない感情があることを、他者に歩み寄らなければ生じることのない感情があることを、どんな結果になったとしても、本気で向き合った末に出した答えならば後悔などしないことを示してくれる少々エキセントリックな2作品。ぜひセットでご覧ください。