――鹿毛さんがクリエイティブディレクターに就いたのは2004年。このときからエステーのCMが変わりましたが、社内での反発はありませんでしたか?
鹿毛:最初は反対されましたよ。「なんだこのCMは!? 商品説明をしろ」と。こっちのほうが売れるんですよと言っても、誰も信用してくれない。でも、本当に売れるんです。その確信はあったし、現に2011年、ミゲルくんのCMのときはライバルとのシェアが逆転し、「消臭力」が1位になっているんです。
皆さんCMに対して誤解しているところがあって、テレビの前にいる方々は商品説明なんて望んでいないんですよ。CMを出す商品だったら品質は既に保証されているんだから、それ以上、きれいになります、臭いが消えますと一生懸命謳(うた)っても意味がない。そもそも朝から晩まで消臭剤のことを考えているお客さんなんていません。それよりも生活や日常に優しく寄り添って、「あ、そうだな。消臭力買おうかな。脱臭炭買おうかな」って。そう思ってもらえるCMのほうが、すっと入っていくんです。経済合理性では考えていなくて、結婚と同じかなって。
――気持ちを預けられる、安心できる、ということでしょうか?
鹿毛:そうですね。これには預けていいかなって。結婚だって、奥さん、旦那さんにある程度のことは求めると思うけど、合理性ではないですよね。そこはちゃんと心理分析して作っているんです。エステーのCMは、僕からお客さんへのラブレターですね(笑)。
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