1曲1曲、とても強い存在感がある曲ばかりだが、メンバーそれぞれの聴きどころというと?
広瀬「『Blowing in the Wind』で、初めてフルでシンセベースを弾いて、すごく新鮮で楽しかった。こういうタッチの曲がアルバムの後半にあることによって、良い軽さが出る効果もあるなって」
服部「僕は『Be Here』です。今までの自分のギターと違った感じで、曲に寄り添ったアレンジができました。最初デモを聴いたとき、結構、スってアレンジが出てきたんですよ。でも一箇所ポップになり過ぎて、竜馬に指摘されて。レコーディングの前日にジョン・メイヤーのライブを見たんですけど、それでテンションが高まり過ぎちゃって(笑)」
井上「陽気さがあふれてたな(笑)」
服部「(笑)そこは変えたんですけど、全体的には今までなかったような渋さがギターで出せました」
井上「結果的に僕には全然思いつかないよう仕上がりになりましたね。どうしてもこういうプレイをしてほしいってところは自分で作るんですけど、そうじゃないところは自分たちの個性を出してほしいなって思ってますね。メンバー4人それぞれルーツが違うからこそ、想像できないところに到達できるおもしろさがあります」
木村「僕は『Unforgive』です。前作からエレクトロとバンドの融合に挑戦していて。それがうまい具合にハマりましたし、後半にかけて盛り上がっていくバンドのドライブ感もすごい感じますし。ドラムも色々遊んでるので、一番やりがいがありました」
井上「『One』はいい具合に、洋楽のダイナミックな感じを出しつつポップスにできたなって思いました。サビでこんなに転調したことは今までなかったんで。(NHK)Eテレのアニメ『メジャーセカンド』のエンディングテーマなんですけど、原作を読んで曲を書き下ろして。作品に寄り添うだけでなく、自分との共通点ってなんなんやろって考えて、ちゃんと自分の物語にもできた。いろんな人に伝わってくれるといいなって思います」
『One』には“ただ一つしかない道で ただ一人の君に逢えた 運命でも奇跡でもない 僕らが掴んだ未来”という確信的なフレーズがある。
井上「“運命”と“奇跡”っていうポップスでよく使われるそのふたつの言葉全否定みたいなテンションで歌ってしまいました(笑)。前からそういうことは歌いたかったんですけど、じゃあ運命とか奇跡の感覚に近いものをどう理解しようっていうのが自分の中で見えてなくて。漠然と、『なんか神任せな感じ腹立つな』としか思ってなかった(笑)。今回自分の中で、どう歌えばいいかっていう手応えを感じられたから書いたんです。ただ希望だけ歌ってても、僕自身あまり『ええな』って思わないっていうか。夢物語感はやっぱ出ちゃう。いかに自分たちがリアルなものを求めてて、リアルに生きてるかっていう。現実の出勤や登校の中で耳に入ってくる音楽でありたい、その力になるものでありたいって思うから、こういう歌詞を書きましたね」
2021年は結成10周年の年にあたる。
井上「今回の制作がめちゃくちゃ楽しかったので、このモードは絶対になくしたくなくて。僕らは、曲をこう受け取ってほしいっていうのは特になくて、受け手が自由に昇華してほしいと思っていて。でも、曲を聴いて安心するアーティストでいたいとは思っています」
取材・文=小松香里
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