――周平は無口だけれど、ひそかに熱い感情も持ち合わせていて。それをひた隠しにしているような印象でした。
「そうですね。周平は言葉よりも体で表現するタイプで、監督とも何も話さないシーンの方を特に大切にして演じていました。でも妹の冬華(浅田芭路)が大きくなってきてからは少しずつ自我が芽生えてきた部分があって。『学校に行きたいんだけど』と初めてお母さんに訴えるときには監督から『ここは初めて自分の意見を言えるところだよ』と言われたので、禁止されたら余計にやりたくなるような気持ちを思い出しながら演じました」
――冬華ちゃんの前でのお兄ちゃんぶりも素敵でした。
「カメラが回ってないところでもずっと『お兄ちゃん、お兄ちゃん』って慕ってくれていて。自分が本当のお兄ちゃんになったような感覚になっていたので、そういう意味でも冬華にはとても助けてもらいました」
――お母さん・秋子役の長澤まさみさんとは?
「長澤さんは、待ち時間に話しているときはすごく陽気な方で。プライベートのことなども話して一緒に笑っていたんですけど、現場に行くともう別人、みたいな。僕は経験がないので、ちょっと前から集中しないとダメだったんですけど、長澤さんは集中のスイッチがすごく早い方なんだなというイメージがありましたね」
――演じる中で一番印象に残っているシーンはどこですか?
「お母さんと並んで橋を歩くシーン。周平に決断が求められる場面で、ワークショップでも事前に練習をしていたんですけど、全然うまくいかなくて。『何でこんなにできないんだろう』と悩んだままだったんです。でも本番に臨んだら、長い沈黙の中でポツリと言われるお母さんからの言葉が、すごく重く入ってきて。さらに自分たちの目の前を歩いている冬華を見たら、『もうやるしかないんだ』って自然と周平の気持ちになれたというか。撮影の中で一番、何も考えずに素の感情に任せてセリフを言えたシーンなのかなと思いますね」
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