ラストシーンでは、S&Fを退社した里中(小泉孝太郎)がオープンした食料品店に春子が“新人歌手・龍前寺アキ子”として応援に駆け付けた。
「龍前寺春子です…アキ子です~」と名前を間違えてしまった春子に東海林が「自分でもこんがらかってんじゃねえかよ」とツッコむと、春子も負けじと「こんがらかってるのはあなたのくるくるパーマだけですが、それが何か?」とニコッ。東海林が「やかましいわ!ったく…ああ、巻いてきた、巻いてきた!」と自虐でおとすまでの軽妙なやりとりががワンセットで展開した。
2人の微妙な関係もたまらない魅力だ。最終回でも東海林が「今朝ケンちゃん(里中)がプロポーズもどきのことを言った時、俺は心底焦った。ケンちゃんにお前を取られるって。13年も経っちまったけど、俺は本気だったんだってようやく気付いたんだ。俺は本気で、お前のこと…」と素直な思いを口にする場面も。
だがそこは、春子と東海林。春子がサッと姿を隠し、東海林が「いねえのかよ!なんか話してる間にいねえんじゃねえかなあと思ったけど案の定いねえのかよ!」とひとりツッコんでオチをつけた。
“スーパーハケン”大前春子の魅力は、東海林の前での人間らしさとのギャップ。東海林の前では失敗もするし、ケンカも売るし、時には信条を曲げた無茶もする。決してパーフェクトではない素顔の大前春子が顔を出す。本当は誰よりも人間くさい春子がその素顔をさらけ出すためには、東海林の存在が不可欠だ。
今シーズンは、そんな人間味あふれる春子と“効率”の権化・AI(人工知能)との対比構造が大きなテーマの一つに据えられた。
効率化は様々な場面に有効だ。だが一方で、春子と東海林の一見ムダ(失礼!)とも言える掛け合いが私たちを楽しませ、癒やし、胸を熱くしてくれているのも事実。どちらが優れているということはない。シンプルに“ムダ”こそが人生の醍醐味、というメッセージをエンターテインメントの形で届けてくれた13年目の「ハケンの品格」に感謝と拍手を送りたい。
「ハケンの品格」最終回は「TVer」で無料配信中。「Hulu」では全話配信に加え、オリジナルストーリーも独占公開されている。(文=ザテレビジョンドラマ部)
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