又吉直樹が見届け人に!自身の死生観と向き合いたくなる「バラエティー×死」の化学反応

2020/08/13 12:00 配信

バラエティー

生前葬TV―又吉直樹の生前葬のすゝめ―

7月9日に「第10回 衛星放送協会 オリジナル番組アワード」の各部門最優秀賞が発表され、バラエティ部門では「生前葬TV―又吉直樹の生前葬のすゝめ―」(BS12 トゥエルビ)が受賞した。

同番組は、“見届け人”の又吉直樹がゲストを迎えて「その人の半生がいかなるものだったのか」を掘り下げていき、番組の中で彼らの生前葬を実際にプロデュースする新感覚バラエティー。

近年、“終活”が注目を浴び、「エンディングノート」や「生前葬」など自分の人生の終幕を見つめる人たちが増えてきた。そんな社会の潮流ではあるが、同番組は “バラエティー”と“死”というある種対極に位置するもの同士を掛け合わせることで、予想もつかない化学反応を起こし、ゲストの半生を紹介する新しい見せ方を実現させている。

番組では、「生前葬」をキーワードに、インタビュー形式で生い立ちや半生を振り返り、「死ぬまでにやっておきたいこと」を発表、印象的な思い出を朗読劇で紹介、自身で選んだ遺影の公開、現在の自分からの弔辞という構成でゲストの半生をひもといていく。

まさに「人に歴史あり」を地で行くがごとく、ゲストの知られざるエピソードや死生観を、驚きや感心、共感などさまざまな感情を味わいながら知ることができるのだが、見ていてふと「自分(の生前葬)だったら…」と考えてしまう。そして、視聴しながら自身の半生に思いをはせたり、自分の死生観について向き合ったりしたくなる。

普段の日常を生きる中で、改めて「自分の死」について前向きに考えることはなかなか難しい。だが、この番組を見ていると、「生前葬」というものが“とても厳かで尊いもの”というよりも、“「死」をフックに人生を見つめ直すイベント”のような身近なものに感じられ、「死とは生きとし生けるものには必ず訪れるもので、何ら特別なものじゃない。だからこそ、その時を自分自身でしっかり見つめながら、今を一生懸命に生きることが大事なのだ」と、バラエティーならではの軽やかな雰囲気のまま思わせてくれる。

ゲストほど華々しくなく、飛び抜けたエピソードがなくても、全ての人に心に残る思い出や大切にしている思いは必ずある。そんな、普段閉まっている“大切なもの”と、久しぶりに対面したくなる珠玉のバラエティー番組だ。

文=原田健

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