中島みゆきの名曲を映画化した「糸」(8月21日・金公開)で、主人公の葵(小松菜奈)と恋人関係になるファウンドマネジャー・社長の水島を演じた斎藤工。今回のインタビューでは、平成元年に生まれた男女の18年に及ぶ運命的な愛を描いた本作についてはもちろんのこと、彼自身が抱く平成という時代への思い、そして俳優業だけでなく監督としても活動する斎藤の強いこだわりが見えてきた。
――完成した作品を見ての感想を教えてください。
映画的にはとてもステキな作品でした。ただ、個人的なところで言うと、水島の描き方は意外とライトでしたね(笑)。
――だから、水島のバックボーンがあまり出てなかったのですね。ですが、劇中では家庭の事情で北海道から東京に出てきていた葵と出会い、彼女と同棲するようになります。つらい過去を背負っている葵にとっては救世主的な存在であり、とても重要なキャラクターだったと思います。
確かにそうですよね。僕も監督としてディレクションをやっているので、作品全体で見たときにカットするのは、意外とキラーカットだったりするんですよね。いいシーンを連続してつなげても、決していい作品になるわけじゃない。なので、瀬々監督の意図は自分なりにしっかりと理解しているつもりです(笑)。
――今回、瀬々監督との初コラボレーションしていかがでしたか。
瀬々監督は今回の「糸」のようなメジャー系の作品もあれば、「ヘブンズ ストーリー」(2010年)や「菊とギロチン」(2018年)といったご自身の内なるところから生まれた社会派のインディーズ映画を振り子のように撮られている方という印象がありました。
瀬々さんはあまり言葉数の多い方ではないので、今回の現場ではそういったお話をすることはなかったのですが、僕が「糸」を見て思ったのは、瀬々監督はどの作品においても人間の見つめ方と描き方、その突き詰め方には変わりがないんだなと。映画を見る側、受け取る側からすると商業映画とインディーズ映画に分けて考えがちですが、瀬々さんはそんな単純な区分で映画を撮られていないんだと分かったことが、僕が今回の映画に参加させていただいた一番の収穫だったと思います。
――その上で水島はどんなキャラクターだったと思いますか?
この映画はラブストーリーであると同時に、平成という時代をたどる作品でもあると思います。そういう意味では、ファンドマネージャーである水島を通してリーマンショック(2008年に起きた世界的規模の金融危機)が描かれていたりして、水島は葵の恋愛相手というよりも、平成に起きたできごとの象徴みたいな存在なのかなと思って演じていました。
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